第3話 パーティーの始まり

 世界各地からお祝いに訪れた人たちで溢れる大広間。テーブルには色とりどりのご馳走が並び、傍らにはカウンターバーも設置されており、高級な酒が並べられていた。


「この度はお招き頂き、誠にありがとうございます」


 オータムが場をわきまえた挨拶をする。真っ白なイブニングドレスがよく似合う。他の招待客もエルフ独特の気品ある美しさに見惚みとれている。


「聖女様、このような会へのご参加、こちらこそありがとうございます」


 デリルもうやうやしく頭を下げる。一瞬開けて二人で顔を見合わせて吹き出してしまう。


「凄いね、デリル。こんな大豪邸建てるなんて! お城かと思っちゃった」


 オータムがいつもの調子で話し始める。


「贅沢過ぎる。びやおもむきに欠ける」


 ブツブツと文句を言っているのはオータムの付き添いでやって来たアストラである。帝都の戦いでは、最終的にこの隻眼せきがんの魔道士アストラが、封魔の赤石せきせきを用いて魔王イズリードを封じ込め、終結した。


 アストラはデリルにとって、同じ大魔道士に師事した兄弟子に当たる。デリルはいつも自分の上を行くアストラが苦手だった。


「ちょっと! 文句言ってる割に両手にお酒とツマミを持ってるじゃない」


 アストラの右手にはハイボール、左手には皿に盛られたオードブルがあった。


「久々の酒だ。少しはたしなませろ」


 アストラはそう言ってハイボールを一口飲んだ。


「はいはい、ごゆっくりどうぞ!」


 デリルは吐き捨てるように言った。「あら、マーガレット?」


「ご無沙汰してます」


 聖女のお付きの一人としてやってきたのは、聖都入出管理者のマーガレットだった。以前、デリルが聖都に入都しようとした時に一悶着あり、それ以降も何度か顔を合わせている。


「聖都の方は大丈夫なの?」


 デリルが尋ねる。


「私以外にも入出管理をしている者はおりますから」


 マーガレットは笑顔で答えた。




「デリル、この度はお招きありがとう」


 デリルたちに勝らずとも劣らない豊満な熟女がデリルに話しかける。


「まぁ、メリンダ! よく来てくれたわね」


 デリルが両手を広げて歓迎する。メリンダは山奥の教会で孤児こじたちの世話をしているシスターである。


「一時は存続の危機にひんしていた教会に巨額の寄付をしてくれて、本当に感謝してるわ」


 メリンダは目に涙を浮かべて言う。中心人物である司教が急逝きゅうせいし、司教が集めていた寄付が途絶え、途方に暮れていたのだ。


 本部からの運営資金では教会を維持するのがやっとという状況で、孤児院は完全に寄付頼みで運営していた。メリンダはダメ元で孤児院出身の冒険者たちに寄付を求めた。そしてデリルから数年分の運転資金に匹敵する大金を寄付してもらったのである。


「メリンダ、あなたは共にあの孤児院で育ち、その後もずっと教会と孤児院を守ってきてくれたんですもの。あのくらいどうって事無いわ」


 デリルがこれまでのメリンダの苦難の日々をねぎらう。


「その上、こんな盛大なパーディーに孤児院の子供たちまで招待して頂いて……」


 メリンダはそう言って子供たちをデリルの前に並ばせる。八人の子どもが嬉しそうな笑顔でデリルを見上げている。「みんな、デリルさんにお礼を言って」


「デリルさん、ありがとうございます!」


 子どもたちが声を揃えてデリルにお礼を言う。


「いえいえ。どうぞ、ゆっくり楽しんでいってね」


 デリルが一番小さな男の子の頭を撫でる。


「みんな、行くわよ。デリル、また後で」


 メリンダは大人たちとは別に用意された子ども部屋に子どもたちを連れて行った。




「デリルさん、このたびはおめでとうございます」


 きちっとした身なりの中年紳士がデリルに声を掛ける。


「まぁ、リチャードさんじゃない。お久しぶり」


 デリルは嬉しそうに手を振った。「その節はお世話になりました」


「いえいえ、お力になれたなら何よりです」


 リチャードは王都ゲイリー商会の会頭である。王都で一番の商会を切り盛りするビジネスパーソンで、竜殺しの剣がドワーフの名工によって作られたという情報をくれた人物だ。「ほら、お前も挨拶しろ」


「デリル……さん、ご無沙汰してます」


 リチャードに促され、照れくさそうに青年が挨拶をする。


「まぁ、ニック。久しぶりね。メリーは一緒じゃないの?」


 デリルは青年に尋ねる。リチャードの息子ニックは、魔王討伐メンバーであるマリーの娘、次女メリーの彼氏だった。


「会場で合流しようって話してます。多分マリー……さんと一緒じゃないかな?」


 先ほどからニックがデリルにもマリーにも言いにくそうにさんを付けているのは、普段はどちらも呼び捨てするからである。しかし、父親の手前、敬称付きで呼んでいるのだ。




「デリル、来たわよ」


 噂をすればという奴で、そこにマリーがやって来た。


「あらマリー、ようこそ」


 デリルがマリーに挨拶をする。


「今日は娘たち全員揃ってるわよ」


 マリーの後ろに三人の娘が並んでいる。リリー、メリー、サリーである。三人とも大事に育てられたらしく豊満巨熟女なマリーに負けず劣らずの体型をしている。


「あら、三人とも、素敵なドレスね」


 三者三様にカラフルなイブニングドレスに身を包んでいる。結婚式ならしゃしゃり出てサンバでも踊り出しそうである。「リリーだけは初めまして、ね」


 以前、竜殺しの剣を取りに行った時にはリリーだけは彼氏と一緒に旅行中だったのだ。


「そうですね。私が旅行中にネロくんが来たって聞いて悔しい思いしたんですよ」


 リリーがその時を思い出して残念そうな顔をした。






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【デリ豊シリーズ・過去作はこちら】 ※第3部からでも楽しめます!


◆第一部:目覚めし竜と勇者の末裔 https://kakuyomu.jp/works/16817330652185609155


◆第二部:復活の魔王と隻眼の魔導士 https://kakuyomu.jp/works/16818093083366171518

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