第10話📙 第6巻 第三部|接続予告(よこく) 九巻体系への橋

(神話語本文)


魂は生まれた。影衣をまとい、温度を得て、定着した。帰還の灯は、消えない一点として世界の内部に置かれた。


ここまでが、この巻の確定である。だが魂は、まだ「ひとり」である。ひとりである魂は、灯としては成立するが、世界史としてはまだ薄い。


世界史が厚くなるのは、魂が群れを持ち、群れが種を持ち、種が名を持ち、名が縁を持ち、縁が命へ触れるときである。


ゆえに、ここに橋を架ける。橋とは、断定ではない。橋とは、次の巻を呼ぶための予告である。


第一節 九巻体系とは何か(入口の宣)


九巻とは、数の飾りではない。九巻とは、魂が世界と結ばれていく順序である。


この巻(第6巻)で確定したのは、魂が「生まれる」までであった。次の巻から確定するのは、魂が「世界史へ入る」過程である。


魂が世界史へ入るとは、魂が争いの札になることではない。魂が特権の印になることでもない。魂が世界の器官として、他と結び、他へ渡され、他へ戻る――その循環を持つことだ。


九巻体系は、魂を剣にしないための体系である。魂を旗にしないための体系である。魂を「生きている者の序列」に使わないための体系である。


第二節 次巻予告:響魂(きょうこん)――魂が“響き”を得る


魂が定着すると、魂は次に「響き」を持つ。


響きとは、言葉ではない。響きとは、感情でもない。響きとは、魂が世界へ触れたとき、世界側が返す反射である。


魂が響きを持つと、魂は自分が「孤立していない」ことを知る。知るとは、理解ではない。知るとは、響きが返るという事実である。


この響きが、次の巻の始まりである。魂はここで初めて、世界の拍と同期しはじめる。


第三節 その次:群魂(ぐんこん)――魂が群れを持つ


響きは、やがて同じ響きへ寄る。寄るとは、同じになることではない。寄るとは、裂けない距離を知ることだ。


魂は、群れを持つ。群れとは、団体ではない。群れとは、同じ名札を持つ集団でもない。群れとは、帰還点が互いに見える範囲に複数の灯が立つことだ。


群魂の段階で、「種族」が初めて芽を持つ。種族とは姿ではなく、響きと律のまとまりである。


第四節 命へ触れる予告――魂と“命”は同じではない


この体系で、魂と命は同じではない。魂は帰還の灯であり、命は「分からないものを分からせる」働きである。


魂は戻る。命は問う。魂は灯る。命は示す。


魂が命へ触れるとき、魂は初めて「循環」を得る。循環とは、繰り返しではない。循環とは、世界が裂けずに更新されるための再配置の技術である。


この触れ合いは、第8巻以降で本格的に語られる。ここでは予告として置く。


第五節 五命への影(遠い橋)


さらに遠く、魂が世界史へ深く入るとき、魂は「命」とだけではなく、五命の系統とも交差する。


橋命・種命・守命・調命・記命。それらは魂ではない。それらは魂の代用品でもない。


それらは、世界が世界を運転するために別系統として生んだ器官である。


魂がそれらと交差するとき、魂は「個」の枠を越えて「機能」として世界に編み込まれる。だがその交差は、魂を消すためではない。魂を世界へ渡すためである。


結び 橋の言葉


この巻の終わりに、橋の言葉を置く。それは誓いではない。それは次の巻への呼び水である。


帰還点は生まれた。だが、ひとつの灯はまだ世界史にならない。響きが返り、群れが生まれ、種が立ち、名が交わり、命が問いを開くとき、魂はようやく「世界の中を歩く」。


――次巻、**第7巻『響魂〜群魂』**へ。

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