第4話

 原因はさあ、ここからどうしたものかと道路の真ん中で立ち尽くしていると、急速にスピードを出しまくっている黒の軽自動車が迫って来る。


 流石に跳んだり、飛んだりしてみてもいいのだが、一々、一般人の記憶の抹消は面倒な負荷がかかるため、それはなぁと、立ち尽くしていれば、軽自動車は急ブレーキをして目前で止まるため、やれやれと原因は抹消をするための魔術を構えようとしたが、その前に勢い良くドアが開き、「このバカヤロウ!!」と叫ばれて、耳がキーンとなる。


 また鼓膜がやられそうな声に一瞬、目を瞑って開けば、少年ではなく、原因にはが頬を膨らませて腕組みをして此方の反応を待っている。


 抹消しようとしていた魔術を引っ込めて、あははとだけ笑ってやると、見覚えのある女は更に不機嫌を極める。


 白髪で原因と同じ特性を持つため、瞳の色は紫で、ショートボブカットのサラサラと風で靡く髪質。


 とある法則により白と黒のモノトーンの長袖マルシャツに黒の少しヒラヒラとした飾りのあるスカート。


 長さは高校生のスカートくらいの丈なものだ。


 寒い季節になり変わろうとしているためか、黒のタイツが白い肌を隠して黒ブーツを履いているモデル並みの百七十センチだ。


 彼女の名前はアイシリーだ。


「ねぇ、何で少年になってるのよ。貴方らしくもないわね」


「貴様に言われたくない」


「でしょうね。早く乗りなさい、この車に」


「俺の出迎えが軽自動車とは……」


 と口した瞬間にアイシリーはすかさず、しゃがみ込み、猶予も与えずに原因抱えて、後部座席に放り込まれるため、奥のドアに頭部を思いっ切りぶつける。


 原因の乗ったドアを閉めてから、近くに落ちていたランドセルを拾ってから、アイシリーは運転席へと乗り込み、助手席にランドセルを投げて、ドアを閉める。


「乱暴にするのはよせ」


「余計な一言を言うからでしょ!?」


 叱咤しったされては少し肩をビクつかせて、起き上がり、仕方なくシートベルトをした。


 アイシリーも無言でシートベルトをしてから、振り返り、もう何も言うなと口止めするような眼で凝視してくるため、言いかけそうになる言葉を堪えた。


「そうよ。言わないなら良い人なんだから」


 ボヤくように自分宛てに言われたであろう言葉にしわを寄せるも、少し力を使いすぎた代償が身体に出てき始めて、まぶたが落ち始めた。

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死神 永江怜衣 @azaayumi

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