第4話「私たちのクラスに、C級の冒険者がいるらしいわよ」
「じゃあ私はこれから仕事があるから行くけど、あんまりゲームしすぎないようにね」
そう言い残して、彼女は部屋を出ていった。
「うん、わかったよ。明日も学校だし、ほどほどにしておくね」
――そして朝。
「……今の時間は何時だ?」
目を覚まして時計を見ると、針は七時を指していた。
学校へ行くには、まだ十分すぎるほど余裕のある時間だ。
「よ、よかった……この時間なら大丈夫だ……。昨日のこともあったし、起きられるようなタイマーに変えて正解だった……」
タイマーのような装置に手を置き、魔法をかけて停止させる。
「あー、いい天気」
伸びをしながら窓の方を見る。
この部屋はドーム状の造りで、半面がガラス張りになっていた。
そこから見える景色は、果てしなく続く雲の水平線。
時折、大小さまざまな生き物が空を飛び交っているのが見える。
てくてくと窓際まで歩み寄ると、遠くの雲が不自然に隆起し、盛り上がったかと思うと、巨大な影が姿を現した。
「魔物はダンジョンの外には基本的に出られないはず……。ってことは、ここは地球の空の上じゃない……どこか別の場所、なのかな……?」
影は雲をまといながら、さらに遠くへと消えていった。
ふと、ガラスに映った自分の姿が目に入る。
「せっかくだし、ちゃんと身だしなみを整えて行ったほうがいいよね」
化粧台の引き出しを開けながら、小さく気合を入れる。
「よーし、エリカ頑張るぞー!!!」
「白峰(しらみね)おはようー!!」
「おはよう、エリカ。やけに気合入ってるわね」
「そ、そんなことないよ? いつも通りだよ、いつも通り!」
エリカは少し慌てた様子で鞄を持ち直し、えへへ、と笑ってごまかした。
「ふーん?」
白峰はじっとエリカの顔を覗き込み、
「でも今日は髪も整ってるし、リボンも曲がってないし。昨日、なにかあったでしょ」
と鋭く指摘する。
「うっ……さ、さすが白峰……」
図星を突かれ、エリカは肩をすくめた。
「ちょっとね。昨日、遅れたじゃん? だから変わった目覚まし時計を使ったのそれが功を指して早めに起きれることができたの!!!」
「なにそれ、気になるじゃない」
白峰はそう言いながら校門へ続く道を指さす。
「ほら、立ち話してると遅刻するわよ」
二人は並んで歩き出す。
周囲には同じ制服を着た生徒たちが行き交い、いつもと変わらない朝の風景が広がっていた。
「そういえば知ってる?」
白峰が何気ない調子で切り出す。
「私たちのクラスに、C級の冒険者がいるらしいわよ」
――冒険者。
その言葉に反応しそうになるのを抑え、エリカは平静を装って答える。
「へー、そうなんだ。それってすごいことなの?」
「そりゃそうでしょ」
白峰は即答する。
「総人口がどれくらいいると思ってるの? 約一億人よ。その中でC級っていうのは、上位六五%から五〇%に入る、中堅冒険者のことを指すの」
表情は変わらず平然としていてクールな白峰が饒舌に口だけ動かして話している。
「お、おぉ……よく知ってるね。私、そんなの全然わかんなかった」
「ただの一般常識よ」
白峰は肩をすくめながら続ける。
「冒険者のランクは上から
S・A・B・C・D・E・F。
Sは別次元で、Fは完全な初心者」
「へぇ……」
エリカは感心したふりをして相槌を打つ。
「で、そのC級っていうのはね」
白峰は指を折りながら説明する。
「EやDみたいな新人を抜けて、ちゃんとダンジョンで稼げるようになった人たち。全体で見れば中間層ね」
「つまり……すごすぎるってほどじゃないけど、ちゃんと冒険者って感じ?」
「命を懸けてる時点で、皆等しくすごいんだけどね」
白峰はうなずく。
「それでも、クラスに一人いるだけで珍しいわよ。」
(……一億人いて、それでもC級で“珍しい”)
エリカはその言葉を、心の中で静かに繰り返した。
「ねえ、エリカ?」
白峰がちらりと横を見る。
「さっきから、考え事多くない?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
エリカは慌てて手を振る。
「ただ、そのC級の人って、どんな人なのかなーって」
「そうねぇ……」
白峰は顎に指を当て、少し考える素振りを見せる。
「昨日は来てなかったけど、今日は来るかもしれないわね。ダンジョン攻略の映像がちょっと話題になったらしいし」
声を潜めて、続ける。
「もうすぐB級に上がるかも、って噂よ」
「B級……」
世界ランク12位のわたし、、、なんで脅されてるの?! @KOKOQ
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