004:魔法院の魔石
「うきゃきゃきゃきゃきゃ!もう一度やってみろうきゃ!」
ワイを指差してけたたましく笑う小さな女。なんだ、この猿みたいな女は?見た目はチビで髪が長い普通の女だが、よく見ると少しガニ股で、耳が小さく楕円形をしていてヒト族とは少し違う。
「もしかして、猿(さる)人族か?」
「うきゃ!そううきゃ!」
やっぱりそうか!この世界には猿の獣人族もいるのか。
「お前、転生者うきゃ?」
な、なんだって!?なぜそれを知っている!?
「変わったやつはだいたい転生者うきゃ。お前、面白いから今日のお祭り、私と一緒に行くうきゃ!」
ちょっと待て、情報が多すぎて追いつかない。まず、なんでワイがお前とお祭りに行かなくちゃいけないんだよ!確かにお祭りは気になるが、ワイにはお姉さんとのめくるめく官能の時間を過ごすという、崇高な義務があるのだ。な、お姉さん!
「はぁ?」
おかわりのビールを持ってきたお姉さんに同意を求めるが、最初と同じく見下すような冷たい目でワイは睨まれた。
えええ!?ワイのチャームは!?
「チャーム!」「チャーム!」
何度もお姉さんの目を見て叫んでみるが、効果はない。
「なんだよ、キモい。あっち行け!」
しかも本気で嫌われた!
なんだよ、チャームが切れるの早すぎるだろ〜!
「うきゃきゃきゃきゃ!本当に面白いうきゃ!早く一緒にお祭り行くうきゃ!」
ショックで打ちひしがれるワイ。猿人族の女に容赦なく手をぐいぐいと引っ張られ、ワイは店の外へと連れ出された。ああ、ビールにお姉さんからもらったお金がテーブルに置きっぱなしだ!うう、食事代と思って諦めるしかないか。
でも、この子猿、転生者のことを知っているみたいだし、少しだけ付き合ってみよう。
「おい、待てって!いきなり引っ張るなよ!」
強引にワイの手を取り街を小走りに駆け抜ける子猿に、ワイは息を切らしながら尋ねた。
「なあ、まずは転生者について詳しく教えろよ。この街にも、俺みたいな転生者はたくさんいるのか?」
「うきゃ!転生者は滅多にいないうきゃ!私も転生者に会うのは初めてうきゃ!でも、転生者は頭が良くて、変わっていて、スケベだと評判うきゃ!」
なに…?思わぬ情報にワイは固まった。
「だから、バカそうだけど、お前が転生者だってすぐわかったうきゃ!」
な、なんだと〜!?「バカそう」は余計だろ!スケベなのは認めるがな!
だが、転生者という存在が知られていることに驚きを隠せない。しかも、ただの噂話ではなく、ある程度は共通認識として広まっているらしい。
「ずっと転生者に会ってみたいと思っていたうきゃ!」
子猿は満面の笑みでそう叫ぶ。どうやら、ワイは彼女にとって珍しいおもちゃか、研究対象のようなものらしい。
「お祭りに行くって言ってたな。今は祭りの期間らしいけど、どんな祭りなんだ?」
「うきゃ!今は収穫の季節うきゃ!大地がもたらしてくれた恵みに感謝したり、森羅万象に宿る精霊や神様に祈りを捧げるお祭りうきゃ!それから、この街を治める領主様にも感謝するうきゃ!」
「なんか漠然としてるな……。まあ、つまり感謝祭ってわけか」
「うきゃ!まずは魔法院に行きたいうきゃ!お祈りをして、魔石をもらううきゃ!」
「魔法院?そんなものがあるのか。それは興味深いな」
子猿に連れられ、ワイは街の中央部へと向かった。
目の前に現れたのは、息をのむほど荘厳な建物だ。そびえ立つ白亜の宮殿は、その中央に巨大な白いドームを戴き、青空によく映えている。ドームを囲むように四隅には尖塔が立ち並び、建物の随所には魔法陣のようなものが描かれた旗が風になびいている。
入り口の巨大なアーチには、植物をモチーフにした細密な装飾が施されており、神聖さと高潔さを感じさせる。これは見事なまでに立派な施設だ。
建物の中に入ると、その荘厳さにさらに圧倒される。
最奥の祭壇には、巨大な青く輝く魔法石が宙に浮き、放射状に光を放っている。この魔法石が、この魔法院の象徴らしい。ヒト族も獣人族も関係なく、たくさんの信者がひざまずき、この石に祈りを捧げている。
建物の両サイドには白いフードの神官が何人かいて、それぞれの前に信者が列をなしていた。神官は杖を掲げ、信者が手に持つ小さなガラスの石に呪文を唱える。すると柔らかな光が溢れ、そのガラス石が青く光り出す。
「あの魔石が欲しいうきゃ!私たちも並ぶうきゃ!」
どうやらこの世界では、魔法は宗教と結びついているようだ。魔法を使える魔術師は神官となり、お布施と引き換えに魔力を込めた石を販売したり、人々に祝福や癒しや加護を与えたり、時には街の守護を担ったりしている。なるほど、平和で争いのない時代には、こうして人々の生活に寄り添うことで、その力を活かしているのか。
小一時間ほど並び、ようやくワイたちも小さな青い石をゲットできた。お布施は子猿が払ってくれた。
「やっと魔石が手に入ったうきゃ!これはお祭りで使ううきゃ!」
「祭りで使う?どうやって?」
そう尋ねると、子猿はにんまりと笑った。
「行けばわかるうきゃ!」
そう言うと、ワイの手をまたぐいっと引っ張り、先へ進んでいくのだった。
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