003:ギルドでチャームを試してみたら

腹の虫が激しく鳴いている。空腹のあまり、思考もまとまらない。どこかで何か食べたい、だが一文無しだ。どうしたものか。

しかし、ワイには作戦がある。こんな時のためのチャームの魔法だ。この魔法を悪用……いや、活用して、女の子を魅了し、飯を奢ってもらおう!せこい作戦だが、背に腹は代えられない。

しかし、本当にそんな魔法が使えるのか?そもそもどうやって使うんだ?えーい、考えていても腹は膨れない!一か八か、当たるだけ当たって砕けてやる!

 

良さげな食堂を探していると、通りの角にパブレストランがあった。あれ?ここはギルドのようだ。ギルドとパブが併業されているんだな。これはちょうどいい。ワイは恐る恐るパブ兼ギルドの重い扉を開けた。

店内は広く、薄暗い。カウンターには客が数人いるものの、テーブル席は閑散としている。一番隅っこのテーブル席に座り、よさげな女の子はいないかと改めて物色すると、いた!カウンターの向こうに、金髪ポニーテールでエプロンをつけたミニスカのウェイトレス。少しヤンキーっぽい雰囲気だが、胸の谷間がまぶしく、やけにその存在を主張している。ワイに気づくと、気だるそうにこちらへ向かってきた。

「注文は?」

ぶっきらぼうで、やる気のなさそうな声。愛想もへったくれもない。なんだよ、お姉さん、こんな接客、普通ならありえないよ!

「あ、あの、とりあえずビールを。それと、メニューを」

もちろんそんな文句は口には出せず、こう普通にお願いすると、

「ちっ!」

と舌打ちされた。

え?今、舌打ちしたか!?こ、怖い……。マジか!

メニューを取りに踵を返すウェイトレスの背中を、ワイは呆然と見つめた。まあ、そうだよな。日本のメイド喫茶やガールズバーの店員じゃあるまいし、満面の笑みで「いらっしゃいませ~♡」なんて萌え萌えな接客は、異世界ではありえないか。

「はいよ」

そう言って、ビールと見慣れぬ文字が並ぶ板を投げるようにワイに渡す。それがメニューのようだが、文字はチートで普通に読めるものの、どんな料理なのかはさっぱりわからない。当てずっぽうで二品ほど指差して注文した。

 

まずはビール!喉もカラカラだ!木製のビールジョッキは、雰囲気もあいまっていい感じだ。ゴクゴクと喉を鳴らしながら一気に半分以上を飲み干す。うまい!フルーティで、IPAっぽい味。アルコール度数もちょいと高そうだ。ビール党のワイは大満足だった。空きっ腹にビールは効く!

全て飲み干し、早くもいい具合に酔いが回ってきた頃、お姉さんが注文した料理を持ってきた。

よし、やるぞ!

酔った勢いに任せ、料理をテーブルに置くお姉さんの目をぐっと見て「チャーム!」と口に出してみた。

どうだ?

お姉さんは一瞬固まったあと、目がとろんととろけだした。徐々に頬は上気し赤みを帯びてくる。息遣いも荒くなってきて、せつなげな顔でワイを見つめてくる。かかった!ほんとに魔法が使えたよ!女の子にこんな顔されたの初めて!異世界に来て本当によかった!

すっかりメスと化したお姉さんは、「はあぁ♡」と吐息を漏らしながらその豊満な胸をワイに押し付け抱きついてきた。うひょうひょ、異世界の女は大胆ですなぁ。最高です!

「あの、料理を食べたいんだけど」

慌てない慌てない。腹が減っては戦はできぬ。お姉さんを今すぐ食べちゃいたいのはやまやまだが、まずは食欲を満たしてから!お姉さんはそれからだ!

「そうね。じゃあ、はい。あーん♡」

お姉さんは、運んできてくれた料理を自らスプーンですくい、「あーん」してくれる。

「あーん」

うん、悪くないぞ!これがモテか!イケメンはいつもこんないい思いをしてるんだろうなぁ。ワイの今までの人生は一体なんだったんだー!

 

しかし、料理は本当に旨い!異世界メシなんて、味が大雑把で調理法も粗雑で、絶対に美味しくないと思い込んでいたが、はっきりとした濃厚な味で、実にいける!空腹で食べたというのを差し引いても、これは相当なものだ。


「あの〜、実はお金を持ってないんですけど…」

この勢いに乗って、恐る恐る本題を切り出してみる。お姉さんは優しい微笑みを浮かべながらこう答えた。

「お金なんていらないわよ。私が全部払ってあげる。っていうか、払わせて♡」

そう言ってエプロンのポケットからお金を取り出し、ジャラジャラとテーブルに差し出した。

おおお、これぞモテ!今までずっと奢る側だったのに!というか、ずっと奢らされていたのに!いかん、感激で涙が出てきた。

「あら、ビールがないわね。持ってくるね♡」

空のジョッキに目ざとく気づき、足早に取りに行ってくれるお姉さん。はーい、よろしくです!

それにしても、最高の滑り出しだ。これぞ、最高の異世界ライフ!


ここらで、もう一つアレを試してみるか。異世界ものと言えば、そう、パラメータだ。自分のレベルやステータスが確認できるやつ。あれが見れると何かと便利だし、異世界ものには必須ともいえる。

よし、行くぞ!

ワイは目の前に指で大きな四角を描きながら叫んだ。

「ステータス・オープン!」


しーーーーーん。


あれ?何も出てこないぞ?

「オープン・ウィンドウ!」「パラメータ・オープン!」「ステータス・プリーズ!」

ダメだ、何も出てこない!なんだよ、ステータスは見れないのかよ!

考えてみれば、ステータス画面なんてゲームのシステムであって、現実に出てくるのはおかしいよな。ありえない。当たり前といえば当たり前だ。

そうガッカリしていると、けたたましい笑い声が聞こえてきた。

「うきゃきゃきゃきゃ!この男、面白いうきゃ!なにやってるうきゃ?もう一度やるうきゃ!『ステータスなんちゃら』ってやつ、もう一度やってみせろうきゃー!」

見ると、小さな猿のような女が、ワイを指差して大声で笑っている。

な、なんだこいつ!?

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