第23話
上空へ上がると、一行を待ち構えていたのは五百体を超える魔物の群れでした。
砂漠の凶鳥『ヴェズル・フェルニル』、小型の砂竜『リンド・ヴルムク』、そして狂暴な飛龍『ワイヴ・ヘルム』。
空を埋め尽くす異形の群れに対し、一新された装備を持つ英雄たちの戦いは、もはや練習に近いものでした。
アルベローゼは新しい軽鎧を翻し、指先から次々と誘導魔法を放ちます。
「いっくよー! 『フリョーズ・エルト・ピル』(追撃誘導炎魔導矢)! ついでにこっちも、『スプレング・ヴァルム・メル』(追撃誘導魔導灼熱四散魔導矢)!」 爆炎と熱い金属片が空を焼き、魔物たちが塵となって消えていきます。
しかし、時折放つ次元干渉魔法矢『ルヴェ・ディメン・ピル』の時だけは、「んー、なんだか上手くいかない。ムズかしいなー」と首を傾げていました。
隣では、ミスリル製の螺旋腕輪を輝かせたエリカが、かつてない高揚感の中で笑っていました。 「すごい、魔力を使ってもあの不快な殺意が湧いてこない! 『ハゥ・ルィー・ストラーレン』(高密度純粋魔力収束誘導光線)! 『グート・エル・ミール』(自動迎撃型誘導火炎)!」 螺旋を描き増幅された光線と火炎が、自動的に敵を索敵し、次々と魔物を撃ち落としていきます。
ライナスもまた、神聖魔導の真髄を見せます。 「逃がしません。『ヘイリグ・ストラール・ドゥルヒ』(神聖光線貫通魔法)!」
鋭い光の杭が空を貫き、魔物の心臓を正確に射抜きます。
あまりの殲滅速度に、飛空挺の魔導弓兵たちは「射程に入る前に敵が落ちてしまう……俺たちの出番がないな」と苦笑いするしかありませんでした。
ディオンと乗り物酔いのバハルは、「同じく」と呟くしかありませんでした。
聖都ルーン・ヴィークに飛空挺が着陸すると、そこにはエレオノーラ女王自らが出迎えに立っていました。
空港を埋め尽くす国民からは「英雄万歳!」の大合唱が沸き起こり、その地鳴りのような歓声の中、一行は即座に用意された豪華な馬車へと案内されました。
王城の重厚な会議室。
そこには女王以下、主要な王族、有力貴族、大臣、そして各騎士団長たちが勢揃いし、異様な緊張感が漂っていました。
中心に立つ大司教が、古ぼけた巨大な地図と、おぞましい気配を放つ古代文献を広げました。
「皆様、刮目してお聞きいただきたい。この聖都の地下深層には、二千年前の『古代魔導エルフ文明』が、都市ごと沈んでおります。
この都、いや、この世界そのものが、その古代都市を封じ込めるための『蓋』なのです」
大司教の言葉に、居並ぶ騎士団長たちが息を呑みます。
「地下への入り口は、この王城の最深部にある『封印の扉』によって塞がれています。しかし、これを開くには、あまりに悲惨な儀式が必要なのです。『乙女三名の命を触媒とした解錠魔法』……」
会議室に衝撃が走りました。
大司教は苦渋に満ちた表情で続けます。
「その魔法は我が国の王族にのみ伝承されてきましたが、あまりの残酷さゆえ、どこかの代の王が伝承を拒否したのでしょう。現在は途絶えております。古の封印を施した者達は、それほどまでにこの扉を開けさせたくなかったのです。……ですが、これを見てください」
大司教が指し示した地図の先には、世界を蝕む魔王の魔力の供給源が、地下都市の「ある一点」と結ばれている様子が克明に記されていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます