#2「証拠をお見せします」
ミキタカは、俺の肩に手をついた。すると、家を出ることなく、一気に、よく分からない場所にワープした。そこは、真っ白い建物ばっかで、ビルというよりは、タワーって感じの建物がたくさん立っている。ミキタカは、「ここが未来です」と言った。「嘘つけ」と信じられなかった俺に、彼女は、また違う場所へワープさせた。
次の場所は、病室だった。何台もベッドが並べられている。怪我人は、一人もいなくて、皆、点滴をしている。なぜか、金属板のアイマスクをつけて、耳にヘッドホンもして、ミキタカと同じ全身タイツも着ている。
「何だいあれ?」
「私たちの家です。」
「えっ、この病室が?」
「病室ではありません。2106年、人類は、人工知能主導の社会が本格的になります。仕事、金銭的負担、手続きなど、人間にとって、少しでもストレスを感じることは、全て、人工知能に任せます。」
「あー分かるぅ。引っ越した時も、住民票とか、めんどくさかったなー。ところで、人工知能って何?」
「ロボットと捉えていただけると、分かりやすいと思います。」
「なるほどね。」
周りを見ると、みんな、目隠しして仰向けになっているだけなのに、笑っている。俺は、不思議に思った。
「ところで、皆、目に金属板つけて、楽しそうな顔してるけど、何なのあれ?」
「あれは、ゴーグルです。皆さん、仮想現実に浸っています。」
「仮想現実?何それ?」
「仮想現実とは、専用のゴーグルをかけると、現実では実現不可能な世界を体験することができるものです。」
「まるで、SF映画だな。」
「そうですね。私の時代では、五感を完璧に再現され、自分が思い描いた人生を選び、歩むことができるようになっています。」
「するってーと、画面に映っている食べ物の味も分かんの?」
「はい。リクエストされた食事は、人工知能、ロボットが提供してくれます。ちなみに、食糧の生産、調理もロボットが行います。人間は、365日、頭の中で、自分の好きなことをして生きていけるのです。」
「へえー、仕事もしないで、みんな、毎日、夢見てるって訳か。で、あの点滴は?」
「生命維持として、栄養が含まれています。大半は、『あれを食べたい』といった食欲を抱く人が多いのですが、中には、食欲がなく、自分の理想に没頭する人もいるので。」
「ふーん。なんか、傍から見れば、可哀想な世の中だな。」
「どうして、可哀想なのですか? 見ての通り、私たちは、ストレスを感じることなく、自分にとって、幸せな人生を過ごしています。」
「そうだけど・・・。まぁ、いいや。」
「そうですか。」
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