第4話
「なれているはずがないじゃないか」
また。
一年ぶりに見かけた彼女は、そう言って笑う。
「いい歳こいて定職にも就かず、友人とも疎遠になって、ぐだぐだと酒を飲むだけの人生を子供の頃に夢見たとすればこの世は地獄だ」
「定職に就いていても同じようなものだよ」
「じゃあ、この世は地獄だ」
半尻分右にずれて生まれたスペースで、俺は弁当の蓋を開けた。箸袋を裂く。それでも俺はハンバーグ弁当を買っていた。
「良かったのかい」
「いいんだよ」
「二年かけてする質問かな」
「実質三日だから」
「それもそう」
今年は上乗せされなかった給料。
用意しない買い物袋。
「それで、キミはどうする」
「とりあえず」
白と茶色だけが占拠する。白の割合が増えた。茶の総量が減ったことで。
蓋から緑は消えたまま。
「買い物袋でも買おうかな」
「それはそれは」
彼女は笑う。
八重歯が見える。
「きっと――」
あの笑い方で。
買えないんだろうね @chauchau
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