第3話
「期待されることが苦手でね」
一年ぶりに見かけた彼女は、そう言ってまた笑う。
笑い方が記憶のどこかへ消えた頃。また、彼女は公園のベンチで酒を飲んでいる。そういえば、こんな風に笑う女性だった。
「会話して。顔を知って。名は聞かなくて。もう一度会ったら恥ずかしいじゃないか」
ちょっとだけ上乗せされた給料。
用意しない買い物袋。
今日も、俺はコンビニ弁当を支えている。
「でもせっかく知り合ったならという葛藤を抱え込んでの一年間でありました」
「なにがしたいんだろうね」
半尻分右にずれて生まれたスペースで、俺は弁当の蓋を開けた。箸袋を裂く。やっぱり俺はハンバーグ弁当を買っていた。
「異世界転生?」
「農業と鉄加工の本を読んでおくべきかもね」
白と茶色だけが占拠する。白の割合が減っている。
蓋からさえ緑が消えた。
「死んでないだけの人生に」
「乾杯?」
「献杯」
「それはちょっと不謹慎かもね」
「そういうボクをかっこいいと思うボクがいる」
食事をとる。
栄養を摂取する。
胃に運ぶ。
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