第2話
足を止めた。
顔をあげた。
目が合った。
「ボクが言うことではないけれど」
猫だった。
そこに居たのは猫のような女性だった。
人懐っこそうで、誰にも懐きはしない。勝手に想像し、勝手に期待する。実に勝手な妄想だ。
「酔っ払いの独り言に付き合うと碌なことにならないよ」
そう言って、彼女は笑う。安っぽい缶チューハイを持ち上げて。
八重歯が、威嚇にも歓迎にも思えてならなかった。
「ただの落第者だよ」
ベンチの中央に座っていた彼女。
半尻分右にずれて生まれたスペースで、俺は弁当の蓋を開けた。箸袋を裂く。そういえば俺はハンバーグ弁当を買っていた。
「人並みに人になれなかった」
蓋にパッケージされただけの緑。外してしまえば白と茶色だけが占拠する。
ベンチに座る二人。もしくは一人と一人。
「たまにどこかで酒を飲むんだ。今日はたまたまここだった」
食事をとる。
栄養を摂取する。
胃に運ぶ。
「美味しいかい」
「普通かな」
「それはいいことだ」
「そうかな」
「普通ができないボクがいる」
「それを」
「うん」
「かっこいいと思うボクもいる」
いたずらっ子のように。
「そういうこと」
彼女は笑う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます