第10話 洸太 vs クロエ④
「うくぅっ……うわぁあああぁっ!」両耳を手で塞いで鼓膜を突き破る高音に耐え、暴風の如く吹き付ける強力な衝撃波に堪えていたが、遂に踏ん張りが効かず後方へ吹き飛ばされていき、背中から地面に倒れ込む。
「くっ……なっ、なんて力だ……」クロエが起こした波導の爆発は、これまで洸太が経験したものよりも遥かに強力で強大だった。
こうした波導の爆発は、本人の中でどうしようもない程のショックな出来事が起きたり、何か極度のトラウマが蘇ったりした時だ。恐らくクロエの場合は後者だろうと洸太は睨む。
その場合は大抵、理性を失って敵や味方、有機物、無機物関係なく周囲を巻き込んで見境なく暴走してしまう。その上、これほどの波導を放出しているにも関わらず、サイコブレイクを起こしていないところを見るに、Rh null型の血液への変換作業が既に完了している状態と言える。
考えられる有効な対処法としては、消耗し切るまで静観して待つか、相手を上回る力で圧倒して戦闘不能にするしかない。だが、とりわけ厄介なのは、理性を失わず思いのままに猛威を振るうことだった。こうした状態の相手は対処が難しい。
とはいえ、今の自分に出来るかどうかわからない。雅人の時は恐怖で踵を返し、城崎に至っては雅人が力づくで無理矢理封じたと聞く。その上、今回の場合はその二人をも優に凌ぐ強さだ。
しかし、以前とは違い、今の自分には心強い味方がいて、聖天珠をこの身に宿している。目を瞑って一際大きな深呼吸をした後、再び両目を開いて「いける」と声に出して言う。そうして恐怖と不安を振り払われた決意めいた顔つきになった洸太は、クロエに向かって走り出した。
先ずは、その規格外の悲鳴を止めようと考えて行動しようとしたその時、突如クロエが叫ぶのを止めて力尽きたように背中を丸めて項垂れる。
いつの間にかクロエを中心に浮遊して周りをゆっくり周回していた石や、木の幹といった大小様々な物まで糸が切れたように地面に次々と落下していった。
一体何が起きているんだと言わんばかりに困惑していると、その直後にクロエが目にも留まらぬ速さで間合いを詰めてきた。
「死ねぇ!」と言い放ち、ビッグディッパーを下から突き上げるように振って洸太を薙ぎ払うも、洸太は咄嗟に両腕で防いだためダメージを軽減できた。
やはり彼女の能力が発動しなかった。あれ程の凄まじい波導の爆発を起こせば、再び能力が使えるようになると見込んでいたが、どうやら発動させるにはもっと別の条件が必要であることが分かった。
だが、その別の条件が何なのかが分からない以上、考えても仕方ないと諦めた。それよりも、爆発的な波導の放出を起こす前と比べて禍々しさは薄れたものの、基礎戦闘力とベーシックスキルを巧みに利用して執拗に追撃してくる彼女をどうにかしなければならない。
「死ねぇ、死ねぇええええ! 消えろ、消えろ、消えろぉおおおおおおおおおお!」と物凄い形相で吠えながら得物を振り回す。
その叫びには、怒りや悲しみ、恐怖、怯えといった色んな負の感情を乗せているようにも見える。錯乱状態とも取れるその様子に、洸太は若干恐怖を覚え、彼女の猛追を必死に振り切る。
これでは振り出しに戻るだけだった。陽助と合流するための突破口となる筈が、却って彼女を覚醒させるという、正しく火に油を注ぐ羽目になってしまった。
有効な手段を失い、洸太は執拗に自分を殺そうとしてくるクロエの攻撃を躱したり、時には反撃したりしながら、この状況をどう打破しようかと思考を巡らすのだった。
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