第8話 洸太 vs クロエ②
「フッ、次はどんな攻撃してくるかなって思ったら、何の考えも無しにいきなり突っ込んで来るなんて。もうあたいに勝てないからって、自棄になるにも程があるっつうの。ほんっと、救いようが無い馬鹿ね。
いいわよ。そんなに死にたいなら、望み通り今ここで、あたいのビッグディッパーで殺してあげるぅ!」と言って、「
そして、「いっっくよおおおおおおお!」と高らかかつ力強く言い放ち、ビッグディッパーを豪快に水平に大きくスウィングする。
ここでクロエは自分の勝利を確信した。ビッグディッパーを振り切ったら、無闇に突っ込んで来た洸太が空間ごと消し飛ばされて死んでしまったのだと。
それは誰からどう見ても疑いようのない結果なのだと信じた。ところが振り切る直前、目に映ったのはこちらに全速力で向かって来る洸太の姿だった。
「えっ、嘘……」クロエは自分の目を疑ってふいに声に出た。あり得ないことが目の前に起きている。場所を移動したわけでもなくただ一直線に走って来ている。
当然射程圏内に入っている筈。そして数メートル近くまで近づいてきたのなら、尚更消し飛ばせないわけがない。自身の能力は、ビッグディッパーを振ってその線上にあるもの全てを救い取って消し飛ばす。
それなのにセカンドスキルが発動しなかった。どうしてなのか。何が問題なのか理由を考えてみたところ、ある事実に辿り着いた。
「シャ、シャードが……」と、チョーカーの後ろを恐る恐る触って、シャードが無くなっているという重大な事実に気付いて目を丸くする。
チョーカーに装着されているそれによって、固有の能力を駆使して戦ってきた。肝心のシャードが消えて無くなったとなれば、これ以上スキルの行使が出来なくなった。それ以外に考えられない。
これにより、セカンドスキルに頼った戦闘は不可能になった。それ以前に、シャードが消失すること自体初めてだった。訓練においてどんなに激しい動きをしても耳から外れることなんて一度も無かった。だとすれば、別の理由で粉々に砕け散ったのではないか。
それが何なのかを考えてみたが、今は戦いの真っ最中。動きが止まったとなれば、動揺していると思われて、それを好機と見た相手が隙を突いてくる筈。戦闘に意識を戻そうとしたその時、洸太の拳が自分の顔に当たっていることに気付いた。
「ぶっ!」
「あっ」
これには洸太も思わず声に出て驚いてしまい、そのままクロエを殴り飛ばす形となってしまった。
これは全く予想だにしないアクシデントだった。ビッグディッパーを振って空間ごと対象を消し飛ばすという彼女の能力は、十二分に恐ろしい能力であると認識しており、故にどう対処して良いのか分からず、ずっと防戦一方の状態だった。
更に敵がもう一人出現し、このまま一騎打ちで戦っても埒が明かないと読んだ洸太は、クロエに避けられることを見越した攻撃を仕掛けようと思い付く。
殴りかかると見せかけてその場から離脱する。わざと殴る動作を見せて回避された隙に俊敏に飛んでいき、陽助と合流して態勢を立て直す。こういった特殊な敵は一対一ではなく二対一でこちらのペースに持ち込んで制圧するに限る。
頭の中で描いている通りに上手く事が運ぶかどうかわからない。ましてや、このようなつまらない攻撃で誤魔化しが利くとは思えずすぐに見透かされてしまいそうだが、それでも行動に移すべきだと決意した。
決め手となったもう一つの理由は、彼女の「空間ごと対象を消し飛ばす」という特殊能力が発動していないということだった。クロエはビッグディッパーを使って狙った対象を救い取るように消失させ、そしてそれを活かした戦闘スタイルで戦っている。
その掬い取る能力の威力は申し分なく、ビッグディッパーを使えばそれに応じて威力も増す。だが、やはり強すぎる能力ゆえだろうか、ある時点から能力が発動せず、ビッグディッパーをただ振り回して叩き払うだけの武器となっていた。
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