【空想特撮小説】『デッカイ卵』

宮本 賢治

『ウルトラQ?』

 それは、突然だった。

 地球外からの隕石の飛来。

 あまりにも突然過ぎて、人類はなすすべがなかった。

 地表への直撃。

 それは避けられない。

 誰もが思った。

 大気圏を突入し、日本の関東の森へ、それは飛来した。

 しかし、直撃寸前。

 それは、停止した。

 まるで意志を持ったかのように。

 上空100メートルの位置でピタリと停止したのだ。

 空中を浮遊したそれは、ゆっくりと地表に近づき、不時着した。

 それは楕円形だった。

 卵型だった。


 そう、デッカイ卵だった。


 全長55メートルのデッカイ卵。

 その調査が始まった。

 調査の結果。

 それはまさに卵だった。

 内部に生命体の反応。

 そして、巨大な生物の鼓動の音が聞こえた。

 ドクン、ドクン。

 脈打つ鼓動。

 そして、その卵は突然孵化した。中から現れたのは、巨大な生命体。

 身長48メートル。

 鳥のような姿をし、二本足で立つその姿。

 それを見た人々は、口々にその生命体をこう、形容した。


 ···怪獣と。


 身長46メートル。

 推定体重6万1千トン。

 鳥に似た風貌。

 1対の手足と頭部に、尾を持つという、地球の脊椎動物に似た外見。扁平な体型の中心、腹部には五角形の紋様が見られた。

 自衛隊は直ちに出動。

 その怪獣の周辺を、到着したヘリが偵察を始めた。

 怪獣。褐色でひび割れた皮膚は、爬虫類のようにも感じられた。が、その顔はフクロウに似ていた。

 2つの目、そして、黄色いクチバシがそう思わせた。

 そして、頭頂部に1本の角。両腕の先端には手の代わりに爪、尾の先にも爪があり、そのすべてがクチバシ同様に黄色かった。

 警戒しながら飛ぶヘリ。

 怪獣はヘリを一瞥すると、頭頂部の角から、黄色い破壊光線を発した。その光線の直撃を受けたヘリは大爆発を起こした。

 怪獣は人類へ宣戦布告したのだ。

 自衛隊は直ちに、ジェット戦闘機3機をスクランブル発進させた。射程距離に入った戦闘機は、怪獣をロックオン。ミサイルを発射した。

 怪獣は、高速で飛来する脅威を感じ、腹部の五角形の紋様を口のように開いた。腹部の口はミサイルを吸引。ミサイルは腹部で爆発するが、その大量の炎はすべてその口の中に吸収された。

 敵わないと判断した3機の戦闘機。回避行動を取る。しかし、怪獣の角から発せられた破壊光線が1機を捕らえる。大爆発が起き、その爆発に巻き込まれた残りの2 機は翼を損傷。キリモミ回転する機体は、パイロットが脱出する隙もなく、地上に墜落して爆発した。

 その後、戦車大隊が現地に到着。交戦する。

 怪獣に、戦車の砲弾は直撃するが、まるでビクともしなかった。

怪獣はその腕を羽ばたかせるように動かした。腕の下の皮膜が突風を起こす。その突風に戦車は吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされ横転した戦車から、生き残った自衛隊員、大田黒おおたぐろは何とか抜け出し、地上に出た。

 怪獣が雄叫びを上げた。

「何で、こんなバケモノが···」

 怪獣を見上げ、大田黒はそうつぶやくことしか、出来なかった。人類の敗北。

 そのとき、大田黒の脳裏にある者が浮かんだ。

「こんなバケモノがいるのなら、

きっと···」

 そう言って、大田黒は歌を口ずさみ始めた。

 子どものときに聞いたヒーローの歌を。

「···胸につけてる マークは流星♪

自慢のジェットで 敵をうつ♪

光の国から ぼくらのために

来たぞ 我等の···」

 そのとき、大田黒が耳にしていたイヤホンに声が届いた。

「未確認飛行物体を感知!

突然、出現しました。

デカい!!

推定40メートル。

···しかも、速い!

マッハ4···さらに加速、マッハ5 !!

現在交戦中の現地に向かっています」

 大田黒はイヤホンに届いた管制官の声に息を飲んだ。

 キィィ〜ン。 

 甲高い飛行音が遠くから聞こえてきた。

 飛行物体が近づいてきた。

 その影は、手足を真っ直ぐに伸ばして飛ぶ、巨大な人に見えた。

 そして、その飛行物体が地上に降り立った。

 大田黒が振動と巻き上がった砂埃に襲われる。

 砂埃が晴れると、怪獣の前に、変わらない身長の巨人が立っていた。

 全身が銀色の肌をした巨人。首や胸の辺りに赤いライン。頭には肌同様、銀色のトサカのようなものがある。

 怪獣が目の前に現れた巨人を見て興奮している。今にも飛びかかりそうな勢い。

 それに対し、巨人も前傾姿勢でファイティングポーズを取った。

「シェアッ!!!」

 巨人が雄叫びを上げた。

「来てくれた···」

 大田黒は、目の前の奇跡に涙がこぼれた。


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