第3話 入団とチーム

「ねぇまだ? 忘れた訳じゃないでしょうね、今日が入団式ってこと」

 スカーレットカラーに黄色のメッシュが入った炎をイメージさせる短髪の少女。

 少女の名は"ナナ・プロミネンス"。

「──あ!」

 片手に懐中時計を持ち、白い毛並をなびかせ二足歩行で脱兎だっとする白兎の魔物を追い掛け。

 今日が大事な入団式だという事を告げられハッと思い出す。

「相変らずね、アダムわ。朝から何してるのよ」

「俺の大事な懐中時計取られたんだよ、作業してる間に」

「アダムの事だからその辺に置いておいたんでしょ。遺品ならちゃんと大事に持ってなさいよ」

「うるせねぇな。そんな事分かってるわ」

 朝からせわしなくどうにかブラックハウンドの手を借りて懐中時計を取り返し。

 懐にしまうと二人は足早に会場へと急いだ。


 会場にはアカデミーを卒業した生徒達が何人も集まり、開始を待っていた。

 人混みの中から一人の少年が歩み寄る。

 ドレッドヘアーに褐色肌をした少年の名は"ガイア・ストーン"。

「よぉ、アダム。随分と社長出勤じゃねぇか」

「うるせぇ。絡んでくんな、ガイア」

「相変わらず口だけは強気だな。落ちこぼれが」

「──あ? 誰に喧嘩ふっかけてんのかわかってのか?」

「召喚師のくせにろくに魔物を躾られないどころか襲われ。何度も卒業試験に落ちてるアダム君に言ってるんだが?」

「よーし、そっちがその気なら買ってやるよ!」

「二人ともいい加減にしなさい! ──ほら、現"賢者"の王様が来たわよ」

 勢いよく頭を殴られたアダムとガイアは痛みを我慢しながらもさすった。

 舞台の上に白髪に白い髭を伸ばした老人。

 老人の名は"ダブラス・ハッカーマン"

「諸君、卒業おめでとう。これからは国の為、民の為に魔法を武器に活動していくにあたり私から一言述べる。大いなる力は他者だけでなく、自身にも牙を剥く。この事を忘れずに精進しなさい」

 ダブラスの挨拶が速やかに終わると数人の大人達が姿を見せ、これから三人一組のチームを組み。

 チームをまとめる先生が一人付く事を説明された。

 アダムのチームメンバーはナナ、ガイアとなり、まとめる先生はというと……。

「感無量である! アダムがきちんと卒業し、吾輩のチームにいる事が」

 スキンヘッドに服が張ち切れんばかりの筋骨隆々な肉体。

 魔術師か?と問われたら誰もが首を傾げる見た目をした男性。

 男性の名は"ナックル・バースト"

「はいはい。相変わらず暑苦しいな」

「それは同意するぞ、アダム」

 二人は呆れたように言い放った。

「早速で悪いが君達にはどの程度の力があるか測る為にテストをする。くであるぞ!」

 そう言うと三人を引き連れ何処かへと向かって歩きだす。

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