第6話 戦争は、規模が変わる
《アイギス・コントラクターズ》の名が、
初めて街の外に出たのは、それから間もなくのことだった。
王都からの使者が現れたのは、雨の降る朝だった。
軍装ではないが、纏う空気が違う。
――国家案件だ。
「貴殿らに、依頼したい」
簡潔な言葉。
そして差し出された地図。
国境地帯。
複数の村が焼かれ、正規軍が足止めを食っている。
「敵は?」
「反乱軍……と、思われている」
その言い方で、察しはついた。
正体不明。だが、統制が取れている。
「こちらの条件は?」
俺は、報酬よりも先に聞いた。
使者は少しだけ間を置き、答える。
「作戦裁量は、全面的に貴殿らに委ねる」
――来たな。
俺は地図を見つめながら、口を開いた。
「これは鎮圧戦じゃない。
小規模戦争だ」
部隊全員を集め、説明する。
「今までと違う。
敵は数も、練度も高い」
緊張が走る。
「だが、やることは同じだ。
戦わずに勝つ。
被害を最小限に抑える」
出撃は夜明け前。
村に近づくにつれ、違和感が増す。
罠、斥候、偽装陣地。
――素人じゃない。
「全員、止まれ」
俺は即座に判断した。
「この戦場、準備されている」
敵は待っている。
こちらを知っている。
部隊を分散し、観測を優先。
正面衝突は回避。
数時間後、確信に変わった。
「……敵は、俺たちと同じことをしている」
統制。
役割分担。
撤退判断。
まるで――
現代戦を知っているかのような動きだった。
交戦は限定的に抑え、
情報だけを抜き取って撤退。
今回の任務は「勝利」ではない。
偵察と評価だ。
陣に戻った夜、俺は一人、地図と向き合っていた。
この世界の戦争は、
俺が思っていたよりも――進んでいる。
そして、思った。
このままじゃ、足りない。
短槍も、弩も、魔法補助も、
部隊戦としては正しい。
だが――
「次は、距離と制圧が足りない」
俺は、紙に新しい図を書き始める。
・遠距離制圧
・連続火力
・抑止力
火薬はない。
だが、代替手段はある。
「……作れるな」
魔力。
機構。
知識。
俺の中に、前世の記憶が鮮明に蘇る。
銃。
支援火器。
現代戦の象徴。
翌朝、全員を集めて告げた。
「次の段階に進む」
兵たちが息を呑む。
「現代武器を作る」
ざわめき。
「この世界に合った形でだ。
誰でも使えて、戦争を終わらせられる武器を」
俺は断言した。
「もう、剣だけの戦争じゃない」
こうして《アイギス・コントラクターズ》は、
戦術だけでなく、技術でも戦争に介入することになる。
戦争は、拡大していく。
そして――
俺たちは、その中心へ踏み込んでいく。
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