第22話 その頃スレイブたちは その1 月ヶ瀬 沙耶香
——テストダンジョン 湖フィールド 訓練施設 2年 月ヶ瀬
「ハイっ! 次は咥えてからのストロークフェラいってみよぉっ!」
ショートカットのボーイッシュな青い髪のサキュバスの掛け声に、私たちは舐めるのをやめる。
そして今まで舐めていた、等身大の人形の股間から生えている男性器を模した15センチはありそうな張り型にショーツを履いているだけの半裸姿で顔を埋める。
人形はシリコンみたいな素材で、私たちがいる第一大広間と呼ばれるこの部屋の床に両足を固定され立っている。
100人以上いる私たちはその人形の張り型を一斉に咥え、前後にストロークを行った。
「ほらそこっ! もっと喉奥まで咥え込まないと!」
サキュバスはそう言うと同時に、1年生らしき女生徒の後頭部を無理やり押し込む。
「うごっ、ごあっ」
女生徒は無理やり喉奥まで張り型を押し込まれた事により、当然の如く苦しそうな表情を浮かべる。
二人のやり取りを聞いていた人たちは、目を付けられないよう必死に張り型を喉奥まで咥える。
隣にいる親友の早苗も悔しそうな顔で、目に涙を溜めながら張り型を喉奥まで咥えた。私も苦しいけどそれに続く。
「いいねぇその顔! そういう顔に男は興奮するんだよ。おっと、このままじゃ死んじゃうか」
女生徒の顔が青くなっている事に気付いたサキュバスは、後頭部を押さえていた手を離す。
「ごえっ、おえっ、ゴホゴホッ」
「あ、吐いたら駄目だよ? そんな事したら男は興醒めするからね。ほら、早く咥えて続けてね。でないと殺しちゃうよ? キミも
「は、はひっ! 続けますっ!」
女生徒は別の意味で顔を青くして、張り型をめいっぱい喉奥まで咥えた。その姿をサキュバスは楽しそうに見ている。
彼女が必死になるのは当然だ。サキュバスたちは簡単に私たちを殺す。
今から9日前のあの日、教室で突然周囲が真っ暗になり意識を失い、目が覚めた洞窟の中でサキュバスクイーンがテストダンジョンを作るために学園を巻き込んだと聞いた。そして男子たちがテスターで、私たちはその性奴隷なのだと。
当然先生たちは激しく抗議した。でも抗議した年配の先生たちは、その場にいた数人のサキュバスに次々と首を刎ねられた。ついでと言わんばかりに食堂のおばちゃんたちや、寮の清掃員のおばちゃんたちも。
初めて見る人の死に言葉が出なかった。温厚で優しかった先生や、いつも元気な食堂のおばちゃんが一瞬で殺されてしまった。涙が止めどなく流れ、全身は恐怖に震えていた。気がつくと股間も湿っていた。
私だけじゃない。あの場にいたほとんどの生徒がそうだった。
これは後から聞かされた話だけど、最初から40才以上の女性は処分するつもりだったらしい。性奴隷としての価値がないからだと。
ショックで動けない私たちに、サキュバスは獣の耳を生やした人間の無魂人形を紹介した。その子は私たちと同じ歳くらいに見え、とても可愛い顔立ちをしていた。
ただその目に光はなく、サキュバスの命令に黙々と従うだけの生きた人形と呼べる存在だった。
サキュバスはそんな彼女を床に跪かせ自分のブーツを舐めさせながら、出来の悪い女は殺してコイツのように無魂人形にすると私たちを脅した。
無魂人形にされなくとも私たちが性奴隷になることは確定している。DPというダンジョン通貨で男子たちに売られ、買われたら奴隷として絶対服従することになる。
この下腹部に薄っすらと浮かぶ隷属の淫紋がその証だ。
死にたくない。ここから出たい、家族に会いたい。無魂人形になれば死んだのと同じ。そこに私の意思はない。死ねば私の身体は男子たちに弄ばれる。そんなのは絶対に嫌だ。
正直性奴隷になるのだって嫌。でも命令には逆らえない。命令されると勝手に身体が動いてしまう。この状態で男子に買われれば、身体を好きにされるのは想像がつく。
それでも死ぬよりは、あんな無魂人形になって辱しめられるよりはマシだ。生きてさえいれば家族に再会できる。
みんなそう思っている。だから必死にこの性技の訓練をしている。
それから口淫の訓練が終わり、少しの休憩のあと今度は人形を仰向けに寝かせて騎乗位の訓練を行った。
人形は寝かせると張り型が親指ほどの大きさに縮む。
私たちはその小さくなった張り型の上で腰をクネらせ、上下にピストンをする。処女であることが商品としての価値になるそうなので、私たちの集団はショーツの上からでいいというのが救いだ。
洞窟で目が覚め、この湖の麓にある大きな屋敷に連れてこられてから今日で9日目。
その間、240人いる私たちは二つの集団に分けられ、午前は湖の周囲を体力作りのためのランニング。そしてプロポーション維持のために筋力トレーニングを行い、午後は性技の訓練を延々と受けさせられている。
ここは地上に見えて地上ではない。
湖も草原も本物にしか見えなかったことから、最初ヨーロッパのどこかだと思った。けど、指導役のサキュバスにここはダンジョン内に作られた空間だと教えられた。
ダンジョン。小さい頃に見たアニメで多少の知識はあった。けど、こんな空間を作れるなんて。
どうもここがフィールドタイプのダンジョンの階層らしいということは、アニメーション学科と声優学科の留学生の子たちが教えてくれた。そして出口らしき場所が無いことも。
ランニングは文化系の子や、ポッチャリしている子には厳しい。指定された距離を走らないとご飯を抜かれる。そしてその指定される距離は日に日に増えていく。
ただでさえ量も少なく美味しく無いご飯なのだ。みんな必死に走っている。
そんな空が常に分厚い雲で覆われ薄暗く出口の無い空間で、私たちは毎日体力作りと性技の訓練に明け暮れていた。
全てはプロポーションを維持、もしくはダイエットすることで購入されやすくなるため。
そして先に購入された者が性技によって男子たちを満足させ、他の男子が私たちを欲しがるようにするため。買われなければここから出れない。ずっと粗食のままで訓練をすることになる。
誰にも買われないままテストが終わると、売れ残った者は処分される。サキュバスがそう楽しそうに言っていた。だからがんばれって。男子たちが見るカタログには、リアルタイムで顔とスリーサイズが載るから良いプロポーションを作れって。
私たちの情報は男子たちに見られている。恥ずかしいけど、買ってもらうためには必要なこと。買ってもらえれば親友を助けるために、誰であっても全力で尽くす覚悟はできているつもり。
ただ、私と親友の早苗や留学生など、15人ほどはどうも1番高額らしい。そのため買われるのに時間が掛かるかもしれない。だからその時までに徹底的に性技を身に付ける。男子を籠絡して早苗も買ってもらえるように。
できれば水泳部の後輩たちや親切にしてくれた留学生の子たちもお願いしたいけど、最優先は親友の早苗だ。彼女は気が強過ぎて絶対に男に媚びるなんてできないから、私が側にいないと酷い扱いをされるかもしれない。だから私が先に買われ、彼女も購入してもらえるようお願いするしかない。
でも……私は誰に買われることになるのだろう?
もし買ってもらえる相手を選べるなら……
私は人形の上でピストンをしつつ、広間の壁面に次々と映し出される多数の映像に視線を向ける。
そこは洞窟のような場所で、角の生えた兎と戦っている男子生徒や体育の先生や各部活のコーチたちの姿が映っている。
これは私たちを買うために戦っている男子たちの姿を見せるため、サキュバスが用意した映像だ。
命懸けで戦って買われたんだから納得して尽くせと言いたいのだろうか?
私は目的の人を探す。すると一人だけ二足歩行の犬と戦っている男性がいた。
その男性は革鎧に盾とナタのような武器を持っていた。顔を見ると頬から顎にかけて大きな切り傷があった。
守衛のお兄さんだ。
ずっと毎日画面越しに見ていたけど、守衛さんは強い。一人で戦い、誰よりも先へ進んでいる。
半年前、初めて正門で見た時は怖かった。
でも、夏休みの学園での合宿の時。高飛び込みを失敗し、肩を強く打って溺れそうになった後輩を誰よりも早く助けてくれた。
学園に言われプールの巡回を強化してたらしく、タイミングよく近くにいたらしい。それでも夏服とはいえ、守衛服のままでプールに飛び込み溺れる前に助け出すなんて凄いと思った。
しかも溺れた人間の助け方を知っている救助方法だった。元オリンピック選手のコーチも感心していたのを覚えている。
守衛さんは肩の脱臼をその場で応急措置をして、後輩に心配ないと笑みを浮かべ安心させていた。そして彼女を抱き抱えて救護室まで運んで行った。
あとで後輩に聞いた話だけど、移動中守衛さんはタオルを掛けてくれずっと痛くないかと心配してくれていたらしい。そして救護室から出る時に早く治るといいな、大会には応援に行くから今回の事を怖がらず頑張れと言って出て行ったらしい。後輩はもうメロメロだった。
確かに顔の傷を気にしなければ、守衛さんは彫りの深い顔立ちをしていてイケメンだ。そんなイケメンに助けられ優しくされたら惚れもするだろう。私もちょっとイイなとは思った。
だから感謝の気持ちを込めて毎朝挨拶するようになった。守衛さんは笑顔でいつも応えてくれた。もう怖くはなかった。
そして現在。私は彼の強さに惹かれている。
私は幼い頃の体験から、勇気があって強くて優しい男の人の背中が好きだ。
強いだけでは駄目。勇気と優しさ、そして広い背中じゃないと魅力を感じない。
そんな私の理想の男性が今、背を向けて戦っている。
「あっ」
彼の背中を見てジュンっと濡れる股間に恥ずかしくなり、私は慌てて映像から視線を逸らした。
どうせ性奴隷になるなら彼に買って欲しい。
でもそれは当分先のことだろうし、私が選ばれるとは限らない。だから私は彼に買ってもらえるよう、彼の目に止まるよう努力する。
そう心に決めた私は一生懸命人形の上で腰を振るのだった。
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