第19話 高収益

 


——テスター生活8日目 テストダンジョン3階層 真田 夜雲——



「オラッ! おっと、『ウィンドカッター』」


 1匹目のコボルトを振り返り様にマチェットで袈裟斬りにしたあと、側面に回り込み俺の首筋目掛けて牙を突き立てようと飛びかかってくる2匹目のコボルトの攻撃を盾で受け止める。


 そして倒れた1匹目の背後から、身を低くして突進してくる3匹目のコボルトへ魔法を放つ。


『ギャンッ』


 ウィンドカッターが首に命中し、大量の血を噴出させながら倒れる3匹目のコボルトを尻目に、盾で受けていたコボルトを押し返しマチェットでその胴体へ横薙ぎに斬りつけた。


『ギャフッ』


 黒鉄のマチェットの切れ味は抜群で、コボルトの上半身と下半身はあっけなく泣き別れその場にグシャッという音と共に倒れ伏す。


「ハァハァハァ……ちょっと走りすぎたか」


 俺は噴き出る汗をタオルで拭いながら、リュックの側面に差し込んでいたスポーツドリンクを取り出す。


 3階層の探索を始めてから3時間。


 ホーンラビットのような不意打ちがないのをいいことに、駆け足で探索を行っていた。


 最初は1匹ずつ倒していたのだが、その度に足を止めるのが面倒になりエンカウントしても無視して走り続けた。当然コボルトたちは俺を追いかけてくる。そして3匹くらい溜まってから今回のようにまとめて処理しているというわけだ。


 横穴に入って行き止まりになっている時や、宝箱を見つけた時はその限りではないが。


 それでもこの短時間で既に60匹以上は倒していると思う。さすがに疲れたが。


「もう少し走る速度を落とすか」


 さすがに今のペースでは夕方まで保たない気がする。


 魔力が上がって体力も増えたが無限ではない。ペース配分を間違えたら夜の壁尻に響く。そこは注意しないといけないだろう。


「少し早いが飯にするか」


 そう決めて近くの岩に腰掛け、弁当とお茶のペットボトルをリュックから取り出す。


「今日はオムライスにハンバーグか」


 小さい頃は好物だったなと懐かしみながら2食分を平らげる。そしてお茶を飲み干し腹が落ち着くまで岩に寄りかかって体を休めた。


 ふと脇に置いていたマチェットが視界に入る。


「刃こぼれは無しか」


 割と雑に斬ったコボルトもいたんだが、あの硬い骨を切断しても刃こぼれをした様子はない。


「さすが2万5千DPもするだけあるな」


 昨日の休みにショップを見ていた時に同じマチェットがあったので、値段を見たら2万5千DPだった。名前も『黒鉄のマチェット』で見たまんまだ。ただ、詳細欄に黒鉄製と書かれていたことで、黒鉄という鉱物があることを知れた。重くて硬いのが特性らしい。


 ちなみに前に使っていた鉄のマチェットは、サービス価格じゃなかったら5千DPする。5万円のマチェットと25万円のマチェット。切れ味が違うのも頷けるというものだ。


 ショップには灰色のローブもあり5千DPだった。名前は耐刃のローブで、これは耐刃と耐火に優れているようだ。素材とかは特に書かれていなかった。


 二つ合わせれば3万DPだ。そりゃ宝箱に2つしか入っていなかったのも頷ける。


 結果として2階層守護者の宝箱は大当たりだったというわけだ。


 そんなことを考えていると、通路の奥から人影が向かってくるのが見える。2匹いる。だいぶ奥まできたから、ここから先は2匹がデフォになりそうだ。


 残魔力を確認。まだ半分は残っている。


「さて、2回戦といくかな」


 俺は腰掛けていた岩から起き上がり、リュックを背負ってコボルトのいる場所まで駆け出した。



§



「ん? 足跡があるな」


 3階層の探索を切り上げ1階層の転移室に戻ってくると、地面に複数の足跡を見つけた。


「どうやら2階層に進んだパーティがいるようだな」


 今朝来た時には足跡はなかったが、俺の後に使用した可能性もある。となると昨日俺が休んでいる時に1階層の守護者を倒したか、今日俺が3階層を探索している間に倒したかだな。


 予想通りといえば予想通りだ。1階層の守護者部屋は、横穴をしらみ潰しに調べていけば誰でも見つけることができる。一週間掛かったのはそれこそ戦い慣れていなかったのだから仕方がない。俺みたいなのは特殊だからな。


「となると俺もうかうかしてられないな」


 2階層の守護者部屋は見つけづらいが、人数がいるんだ。俺みたいに直感が働く者がいるかもしれない。少しキツイが、明日も今日くらいのペースで探索するか。


 俺は8時間走り続け疲れ切った身体に鞭を打ち、転移室を出てダンジョンの出口へと向かうのだった。



 §



「ふう……」


 マイルームに帰ってきた俺はリュックを下ろし、装備を外してからベッドへと腰掛ける。


 疲れた。


 所々で休憩をしたとはいえ、さすがに8時間走り続けるのは厳しかった。


 ウィンドカッター分の魔力を残すため、身体強化は使わなかったからな。それにコボルトは素早く生命力もなかなか高い。


 一撃で倒せたホーンラビットと違い、二撃喰らわせないと倒れないで向かってくる個体もいた。そのぶん体力を消耗したというのも大きいだろう。


 最後の方は4匹と戦っている最中にもう2匹現れて6匹と戦うはめになったしな。さすがに6匹相手は疲れたし、魔力も空になった。


 明日はもう少しペースを落とすかと思っていたんだが、他のテスターたちが上がってきているのを見てしまうとな。これが追われる者が感じるプレッシャーか。


 そんなことを考えつつ身体を休め、少しして重い腰を上げシャワールームへと向かった。


 そしてサッパリした所で戦果の確認を行う。


 まずは魔石の精算からだ。


 リュックから今日手に入れた魔石を魔法陣の描かれた敷石に載せる。


 《F+魔石184個16,560DPとなります。よろしいですか? はい/いいえ》


「おお、やっぱり稼げるな」


 換金した結果に思わず笑みが溢れる。


 日給16万円とかもう年収4千万コースだろ。


「これで一気にスレイブ購入が近くなった」


 生徒たちも3階層まで来れば、報酬の分配をしても3ヶ月くらいで5級を買えるようになるかもな。


 次に硬貨を換金する。


 これは大銅貨12枚と銅貨36枚で1,560DPとなった。


 今日の宝箱は硬貨とポーション類ばかりだったので硬貨は多めだ。


 ポーションは5等級ポーションが2つに、5等級魔力回復ポーションが3つ手に入った。


 どうやら3階層の宝箱はポーション類が出やすいみたいだ。


 コボルトで怪我をする者が増えるという想定なのかも知れない。確かにあの爪で何度も攻撃を受ければ、強化学生服とはいえボロボロになるだろう。


 うっかり噛みつかれたらさすがに引き千切られると思うし、剥き出しの胸元や首を狙われる可能性もある。


「まあこうやって救済措置的な物が出てくる内は、まだまだ初心者レベルの階層なんだろうな」


 この先どんな強い魔物が出てくるのか楽しみだ。


 ハハッ、とんだ戦闘狂だな。


 死にたくはないのにな。どこか戦いを楽しんでいる自分がいる。


 人型の魔物が出てきたからか? 昔の戦場を懐かしんでいるのかもな。


 あれだけ痛い目に遭って、顔や身体も傷だらけになったのにな。マゾかよ。


 まあどうでもいいか。


 それよりもDPだ。休みの間に結構散財したが、それでも残高は12万DP越えとなった。目標の200万DPにはまだまだだが、この調子で進んでいけば収入も上がるはずだ。


 2ヶ月だ。2ヶ月以内に1級スレイブの月ヶ瀬を手に入れる。そしてあのむしゃぶりつきたくなるような身体を毎日堪能してやる。


「おっと、待てだ待て」


 プールの巡回時に見た月ヶ瀬の競泳水着に押しつぶされている大きな胸と、水着が食い込んだプリンプリンの尻を思い出していたら息子が元気いっぱいになってしまった。


 疲れていても息子は元気なもんだ。疲れマラってやつだな。


 俺は飯食うまで待てと息子に言い聞かせ、ショップで100DPの夕食セットを2セット購入する。


 ロースカツと出来立ての白米。そして大量のキャベツに満足し、腹が落ち着いた所でお楽しみの壁尻タイムに突入した。


 股間を硬くしながら魔水晶を操作し壁尻サキュバスを呼ぶと、なんと三日連続で高貴サキュバスが現れた。


 本人も三日連続で来たことがわかっているようで、両足を閉じモジモジしている。


 ディスプレイに目を向けると恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


「どうやら俺のことを気に入ってくれたみたいだな」


 俺が口角を上げ空間ディスプレイに向かってそう言葉をかけると、彼女の翼がバサバサと羽ばたく。それはまるで ”ち、違うんです。たまたまなんです” と言い訳をしているようだった。


「可愛い女だ」


 そんな彼女の姿に興奮した俺は、いつものように彼女の爆乳の下に潜り込みその白くて張りのあるたわわに実った果実へとムシャぶりつくのだった。


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