第2話 慣れ親しんだ遊び場
目を覚ますと、草の匂いがした。
「……ほぁ?」
考えるよりも先に出た間抜けな声。
空はやけに青く、雲はドットじゃない。
なぜだか俺は草原に寝転がっていた。
何もわからないまま立ち上がろうとして――気づく。
「……この格好」
革っぽい服。
腰には剣。
そして、視界端に浮かぶ数字。
気づいてからようやく剣の重さや質感が身体に伝わってくる。
「あー……」
理解が追いついた瞬間、脳が仕事を放棄した。
「突然胸の奥が痛くなって、倒れた気がして、気づいたらここにいて、武器持ってて、この懐かしくも苛立ちを覚える草原……」
辺りを見渡す。
「あのクソゲーの世界かよっ!?!!??」
背中を反らしながら大声を出しても、応える人は誰もいない。
そりゃそうだ、ここがクソゲーの世界なら、NPCに話しかけても会話が起きない。
思わず剣を抜いてぶんぶん振り回していたとき――
「ぐしゃ」
背後で草を踏みつぶす音が聞こえた。
「おん?」
振り向く。
そこにいたのは――
「チュートリアルが死闘って言われるあの岩石モンスターじゃんか……」
岩一つないのになぜか現れる岩石モンスター。
しかも最序盤のくせに、中盤あたりで出てきそうな人型のフォルム。
もちろんのコイツは過去に戦っている。
一応チュートリアルだからゲームオーバーになることはない。
だけどこの岩石野郎は異常に硬すぎて、こっちの攻撃が三~五程度しか通らない。
なのにHPが六十あるという。
だからひたすら殴ればそのうち倒せるけど、向こうの攻撃を受ければもちろん自分の体力が減る。
つまり自分の体力は一以下にならないけど、絶命しかけた状態でただ殴り合うという作業が始まってしまうわけだ。
くたびれた姿の主人公を見ながら、ただ【戦う】コマンドを入力し続ける登竜門のような存在。
そんなクソ硬モンスターに視線を送る。
互いににらみ合いながら、俺は腰の剣を抜いた。
上等だぜ。
剣を肩に担ぐ。
「俺はクソゲーマイスターだからなっ!」
こうして、クソゲー実況者の異世界攻略は一切の感動もなしに始まった。
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