【急募】クソゲーの世界で生き抜く方法 ~転生先はバグ・理不尽・バランス崩壊のクソゲーだった~

ろっし

一章 クソゲー実況者、異世界で再起動する

第1話 人生ログアウト

「はいどーもー、本日も元気に人生を溶かしていきましょう」


 マイク越しにそう言いながら、俺はコントローラーを握っていた。


 時刻は午前三時。


 コンビニ弁当の空き容器とエナジードリンクの缶が、机の上でダンジョンのように積み重なっている。


 今プレイしているのは、発売初日からレビューが戦場と化したRPG――


【ロイヤル伝説Ω ~時空を越えて愛を知れ~】


・地味なクエストが妙に多く快適性がない。

・開発側の大人の事情でヒロイン登場のイベントが削除される。

・チュートリアルの時点で死闘。

・シナリオライターが途中でフェードアウトしたせいで、繋がりのないガタガタ物語。


 そんな欠陥だらけのゲームだが、俺にとっては大事な相棒だった。


 なぜなら――


 炎上しない程度にクソゲーを面白く実況する。


 それが、無名ストリーマーである俺の唯一の武器だったからだ。


「はいもうね、これ作った人、そのとき思いついたアイデアでそのままヤケクソに作ったでしょ」


 コメント欄が流れる。


『草』

『いつもの』

『それ言うの何回目?』


「安心するがいい。寝れないぽまえらのために朝まで配信しちゃるから」


 そう言ってコントローラーを握りしめたとき――


 胸の奥が、ぎゅっと掴まれたように痛んだ。


「……え?」


 視界が歪む。


 手からコントローラーが落ち、床に転がる音がやけに遠く感じた。


「あっ、これ……」


 最後に見えたのはモニター端に映る同接の数。


 まだ十人程度。


 もっとがんば――


 そこで視界が途切れた。

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