ゼツボー猫
「むかしの話よ、とてもね」
母さんはわずかな月光が差した薄暗い部屋のなかで、僕の頭を撫でながら、その話を語りはじめた。僕はまだ七歳で、小学生になったばかりだった。母さんはゆっくりと、まるで僕の心にタイプライターで文字を打ち込むように語ってくれる。
「兵隊さんが、いっせいにAK47を乱射したの。十字架の、イエス・マダムに向けて」
ライフルの銃口から放たれた数え切れない銃弾は、十字架のイエス・マダムの太ってふくれた腹と頭と体を蜂の巣にしてしまい、草原はあっという間に血の海へ変わりました。兵隊さんたちが笑い合っていると、マダムの見るも無惨な死体から、一匹の猫が這い出てきました。そう。ゼツボー猫です。
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