【第3章:反逆者・ザクⅡ改の肖像 ――現場スタッフの意地】
圧倒的な性能と不気味なほどのシステムを象徴するガンダムアレックス。
この巨大な王に対し我らが主人公、バーニィは何を以て挑んだのか。
それはジオン公国軍における最も普遍的で、最も古臭い量産機――「MS-06FZ ザクⅡ改」であった。
だが、なぜ最終決戦の機体は「ザク」でなければならなかったのか?当時の潤沢な環境ならば、もっと強力な新型機を主役にすることだってできたはずだ。
しかし彼らは頑なに、最後の一機としてザクを選んだ。
それはこの機体こそが、ガンダム神話に挑む一九八九年のクリエイターたち自身の自画像だったからではないだろうか。
彼らには富野由悠季のような天才的な「
だが、彼らは映像制作のプロフェッショナルだった。
サイクロプス隊の隊長、ハーディ・シュタイナーのように、あるいは「オールドタイプ」のベテラン兵士のように、彼らは自分たちが培ってきた「
この章のハイライトは、バーニィが森林公園で展開する戦術にある。
彼は真正面からのMS戦を放棄した。まともに撃ち合えばスペック差で瞬殺されることを熟知していたからだ。
その代わり彼は
これらは全て「騙し討ち」であり、「計算されたハッタリ」だ。
そしてこれこそがOVAスタッフたちの武器そのものである。
ニュータイプのような「ひらめき」や「奇跡」には頼らない。
その代わり緻密な作画、計算されたレイアウト、泥臭い脚本のギミックという「職人芸」を積み重ねることで、彼らは「
ザクⅡ改とは、魔法を使えない人間たちが知恵と技術だけで神殺しを成し遂げようとする、職人たちのプライドの結晶なのだ。
そして最も重要なのは、「なぜバーニィは戦ったのか」という動機だ。
劇中、彼は一度は逃げようとした。コロニーを脱出し、自分だけ助かる道を選びかけた。
誰も彼を責めないだろう。彼は正規のパイロットですらない、ただの補充兵なのだから。
しかし彼は戻ってきた。
アルへの嘘を真実にするため?クリスを守るため?
どれも正解だが、もっと根本的な理由は彼自身の言葉の中に隠されている。
「今、逃げたら、自分を許せなくなる」
これは世界を救うための正義ではない。
自分自身への矜持だ。
ここで逃げてしまえば自分は一生「ガンダムの影に怯える敗北者」のままだ。負けると分かっていても、ミンチになると予感していても、一発殴ってやらなければ気が済まない。
そんな男として、あるいはクリエイターとしての最低限の意地。
この矮小で切実な個人的動機だけが、あのボロボロのザクを突き動かす
アムロ・レイは本当は戦いたくなかった。
彼は望まずして戦火に巻き込まれ、周囲の大人たちに強いられ、結果として世界を救う英雄という十字架を背負わされた。
対してバーニィは違う。
彼は一度は逃げることが許された。誰も彼を英雄だなんて思っていなかった。
だが彼はその自由を捨てて、自らの意思で死地へ舞い戻った。
世界のためでもジオンのためですらない。
たった一人の
だからこそ私たちはアムロに畏敬の念を抱きながらも、バーニィに強く共鳴するのだ。
巨大な
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