第2話 なんでお前がここにいんの!?

「いやあああああああああああああ!」



 そこにいたのは、紛れもなく俺たち勇者パーティが倒すべき存在『魔王』であった。どうしてコイツがこんな所に全裸でいるんだ?



「ま、魔王っ! 貴様どうしてここに―――」


「当たり前だろっ……! こっ、こここここここはあたしの家だ!」


「にわとり? ……はっ、まさかここが魔王城っ!?」


「なにをたわけているっ! こ、ここまでたどり着いたということは、ダンジョン《魔王城の庭園》も抜けてきたんだろっ!?」


「い、いや……そんな物騒な名前の場所は通って来てないと思うが……あ、でも途中の草原に、いっぱい犬みたいなモンスターいたぞ。あと毒々しい草木とか、すごい整備不良な土地とかもあって大変だったけど」


「それだよ《魔王城の庭園》! レベルカンスト級の難関ダンジョンだぞ!?」


「でも、犬しかいなかったぞ?」


「その犬はケルベロスだ!」


「あ、あれが!? ……じゃあ、あの紫色の草とか大木は……?」


「あぁ、アレはな? あたしが魔力のあらん限りを使ってなんとか作り出した《無機物型自律式ポイズンフラワー》だ。かなり手こずっただろうっ? それこそ、お前らの体力ゲージを半分くらい抉り取っていてもおかしくは……」



 饒舌にべらべら話していた魔王。しかし、俺がアイテムストレージから具現化した《お花》を見るなり、頭を抱えて叫び出した。うるさいなぁこの人。



「おおおおおおおおおおおい! そ、それ……それ、それ……」


「もしかして、この綺麗なお花が《無意識的モリモリバグフラワー》ってヤツなのか……? 単発の弱魔法で刈り取れたんだが」


「……」


「……ま、まあそんな顔するなよ魔王」


「……ふ、服着てくる」



 しょんぼりした顔で、俺の隣を通り過ぎ、忘れてしまったらしい服を取りに向かおうとした魔王。しかし、ここには『見えない壁』が存在している。それには気づかず、壁へ向かって直進してくる魔王。



「あっ魔王。ここには良く分からんが変な壁が……」


「ぐべらっ!」



 あーあ。ぶつかっちった。

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【カクヨムコン短編】《この先は、製品版でお楽しみください》って言われちゃった勇者と魔王 りんごが好きです(爆音) @pizzasuki

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