【カクヨムコン短編】《この先は、製品版でお楽しみください》って言われちゃった勇者と魔王
りんごが好きです(爆音)
第1話 ○○○だって、魔王は魔王だもんね
《この先は、製品版でお楽しみください》
今、俺の目の前にはこんな文字列が表示されている。まるで透明なホログラムが、俺の前に垂直に浮かんでいて、その上に《製品版》などという聞き覚えのない言葉が。
―――もしかすると、これは勇者たる俺にとって、最重要と言っていい―――
―――言わば、世界の真相的なアレなのでは?
モンスターやレベル、ダンジョンという概念さえも存在しているこの世界において、開けてはいけないパンドラの箱を意図せず開けてしまったのでは?
―――しかしだ。
俺には、これをどうしても無視して突き進まなければならない『ある理由』があるのだ。
「ふぅ……このダンジョンのモンスターたちは手強かった……おかげで汗だくだくだくだぜ……」
お風呂に入ることである。
ボス戦直前の通路に設置されているセーブポイント。その手前に温泉(銭湯?)みたいな空間があった。男と女を表すピクトグラムも貼られていたので、間違いないだろう。
イケメン勇者として、汗だくだくだくのままでフロアボスに会うことが許されるわけはない。なので、俺は勇者パーティにことわって、このセーブポイント温泉へと向かったわけだが―――
《この先は、製品版でお楽しみください》
「いや何だよこれ! 入り口まで3メートルと無いのに、まるで見えない壁でもあるみたいに―――」
びくともしないのである。新手の闇属性魔法か? また魔王は新たな魔法を開発したのか?
綺麗好きの俺が、決死の表情(笑)で打開策を探していた―――その時だった。
「ふぃ〜いい湯でしたよっと……いけねっパジャマ持って来るの忘れちった」
未だホログラムと文字列が表示されている、その見えない壁の向こうに位置するその空間から、誰かが出てきた。
魔王の特徴―――
王国の情報筋によれば―――紫色のマントに、額には取ってつけたような二本のホーン。合金で作られた最高級装備に、とても似つかわしくない華奢な体を包んでいる
ソイツは、なんと装備類をオール解除状態にしていた。つまり、生まれたままの姿である。
「―――ま、魔王……?」
「ほへ……? ゆ、勇者……?」
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