第41話 エピローグ —— 永遠の物語

 それから、五年が経った。

 

 希望は、元気な女の子に育った。

 

 黒い髪、大きな目。

 

 アレンに似て、活発で、正義感が強い。

 

 そして、私に似て、優しくて、人を思いやる心を持っている。

 

 ある春の日。

 

 私たち家族は、王城の庭園でピクニックをしていた。

 

 アレン、私、そして希望。

 

 エリーゼ、ガルド、リーナも一緒だった。

 

「お母さん、見て」

 

 希望が、花を摘んできた。

 

「きれいでしょう」

「本当ね。きれい」

 

 希望は、花をエリーゼに渡した。

 

「エリーゼおばさまに、プレゼント」

「ありがとう、希望ちゃん」

 

 エリーゼは、嬉しそうに花を受け取った。

 

 ガルドは、希望と追いかけっこをしていた。

 

「待て、希望」

「きゃは、捕まえて」

 

 希望は、笑いながら走っている。

 

 リーナは、私の隣に座っていた。

 

「水野様、幸せそうですね」

「ええ」

 

 私は、微笑んだ。

 

「とても、幸せです」

 

 リーナは、空を見上げた。

 

「あの時、水野様がこの世界に来てくれて、本当によかった」

「...」

「水野様がいなかったら、アレン様は今も心を閉ざしていたでしょう」

「...」

「そして、私たちも、こんなに幸せではなかったでしょう」

 

 私は、リーナの手を握った。

 

「私も、この世界に来てよかったです」

「...」

「みんなと出会えて、本当によかった」

 

 アレンが、戻ってきた。

 

「水野、希望はどこだ」

「ガルドさんと遊んでいますよ」

 

 アレンは、座った。

 

「ふう、あの子は元気すぎる」

 

 私は、笑った。

 

「あなたに似たんですよ」

「...」

「魔王を倒した勇者の娘ですから」

 

 アレンも、笑った。

 

「そうかもな」

 

 夕方になって、私たちは家に帰った。

 

 希望は、疲れて眠ってしまった。

 

 アレンが、希望を抱きかかえて、ベッドに寝かせた。

 

「すやすや、よく眠っている」

「ええ」

 

 私たちは、リビングに戻った。

 

 窓の外を見ると、夕日が美しかった。

 

「水野」

「はい」

「この五年間、幸せだったか」

「とても」

 

 私は、頷いた。

 

「毎日が、幸せです」

 

 アレンは、私を抱きしめた。

 

「俺も、幸せだ」

「...」

「お前と出会えて、結婚して、希望が生まれて」

「...」

「これ以上の幸せは、ない」

 

 私も、アレンを抱きしめ返した。

 

「これからも、ずっと一緒にいましょう」

「ああ」

 

 その夜、私は一人で書斎にいた。

 

 日記を書いていた。

 

 この世界に来てからの、すべてを記録していた。

 

 アレンとの出会い。

 

 リハビリの日々。

 

 四つの試練。

 

 結婚。

 

 出産。

 

 すべてが、宝物だった。

 

 日記の最後に、こう書いた。

 

「私は、異世界に召喚された理学療法士、水野あかり。

 

 いや、今は、アレン・ヴァルハイトの妻。

 

 この世界で、私は多くのものを得た。

 

 愛する夫。

 

 可愛い娘。

 

 大切な友人たち。

 

 そして、生きる意味。

 

 元の世界に帰ることもできた。

 

 でも、私はこの世界に残ることを選んだ。

 

 それは、正しい選択だった。

 

 後悔は、一つもない。

 

 これからも、この世界で生きていく。

 

 アレンと、希望と、みんなと一緒に。

 

 そして、診療所で、多くの人を助けていく。

 

 それが、私の使命だから。

 

 それが、私の幸せだから。

 

 異世界リハビリテーション。

 

 私の物語は、まだ続く。

 

 永遠に。」

 

 私は、ペンを置いた。

 

 そして、窓の外を見た。

 

 夜空には、満天の星が輝いていた。

 

 美しい星空。

 

 この世界の星空。

 

 私の、新しい故郷の星空。

 

 これからも、ずっとこの星空を見ていくんだ。

 

 アレンと、希望と一緒に。

 

 そう思うと、胸が温かくなった。

 

 幸せだった。

 

 本当に、幸せだった。

 

 

 ———— 完 ————

 

 

 

 

あとがき

 

 この物語を、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 異世界に召喚された理学療法士、水野あかりの物語。

 

 彼女は、専門知識と優しさで、傷ついた勇者アレンを救いました。

 

 そして、二人は愛し合い、結ばれました。

 

 四つの試練を乗り越え、魔王の復活を阻止し、平和を取り戻しました。

 

 そして、新しい家族を作り、幸せに暮らしています。

 

 この物語は、愛と成長、そして希望の物語です。

 

 どんな困難も、諦めなければ乗り越えられる。

 

 愛する人と一緒なら、どんな未来も切り開ける。

 

 そんなメッセージを、込めました。

 

 読者の皆様に、少しでも勇気と希望を与えられたなら、幸いです。

 

 また、いつか、別の物語でお会いしましょう。

 

 ありがとうございました。

 

 

                           著者より

 

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異世界リハビリテーション ~勇者を引退した彼に、理学療法士の私ができること~ 佐藤くん。 @satou_kenta

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