第37話 結婚式の準備
結婚式まで、一週間。
王城は、慌ただしくなった。
エリーゼの指揮の下、準備が進められていた。
式場の装飾、料理の手配、招待客のリスト。
すべてが、完璧に計画されていた。
私も、準備に追われていた。
特に、ドレスの最終調整。
「水野様、少し腕を上げてください」
仕立て屋が、ドレスを調整している。
「はい」
私は、腕を上げた。
鏡に映った自分を見る。
美しいウェディングドレス。
あの時、リーナと一緒に選んだドレス。
「完璧です」
仕立て屋は、満足そうに言った。
「水野様に、とてもお似合いです」
「ありがとうございます」
リーナも、一緒に来てくれていた。
「水野様、本当に美しいです」
「ありがとう、リーナさん」
「アレン様、きっと驚かれますよ」
私は、少し照れた。
アレンは、どんな顔をするだろう。
楽しみだった。
一方、アレンも準備に追われていた。
式での誓いの言葉を考えたり、衣装の調整をしたり。
ガルドが、アレンを手伝っていた。
「アレン、緊張してるのか」
「...少し」
「らしくないな」
ガルドは、豪快に笑った。
「お前、魔王とは戦えるのに、結婚式は緊張するのか」
「別物だ」
アレンは、少し笑った。
「戦いは、剣を握ればいい」
「...」
「でも、結婚式は、言葉が大事だ」
「...」
「それが、難しい」
ガルドは、アレンの肩を叩いた。
「大丈夫だ」
「...」
「お前の気持ちを、素直に伝えればいい」
「...」
「水野殿は、きっとわかってくれる」
アレンは、頷いた。
「ああ」
三日前、私は一人で王城の礼拝堂を訪れた。
静かな場所で、少し考えたかった。
礼拝堂に入ると、一人の女性がいた。
エリーゼだった。
「エリーゼ様」
「水野様」
エリーゼは、祭壇の前で祈っていたようだった。
「邪魔をしてしまいましたか」
「いいえ」
エリーゼは、微笑んだ。
「ちょうど、終わったところです」
私たちは、一緒にベンチに座った。
「何を、祈っていたんですか」
「アレンと水野様の、幸せを」
エリーゼは、静かに答えた。
「お二人が、末永く幸せでありますように、と」
私は、胸が熱くなった。
「エリーゼ様」
「はい」
「本当に、ありがとうございます」
「...」
「あなたがいてくれたから、私たちはここまで来られました」
エリーゼは、首を振った。
「いいえ、すべてはお二人の力です」
「...」
「私は、何もしていません」
「そんなことありません」
私は、エリーゼの手を握った。
「あなたは、いつもアレンさんを支えてくれました」
「...」
「そして、私も支えてくれました」
「...」
「本当に、感謝しています」
エリーゼの目から、涙がこぼれた。
「水野様、お願いがあります」
「何でしょう」
「アレンを、幸せにしてあげてください」
「...」
「そして、できれば」
エリーゼは、微笑んだ。
「私のことも、友人として、覚えていてください」
私は、エリーゼを抱きしめた。
「もちろんです」
「...」
「あなたは、私の大切な友人です」
「...」
「ずっと、忘れません」
二日前、ガルドとリーナが私を訪ねてきた。
「水野殿」
「ガルドさん、リーナさん」
「少し、話がある」
三人で、庭園を散歩した。
「水野殿、結婚、おめでとう」
「ありがとうございます」
「俺たちからも、祝福させてくれ」
ガルドは、小さな箱を取り出した。
「これは」
「俺たちからの、結婚祝いだ」
箱を開けると、美しいネックレスが入っていた。
青い宝石が、輝いている。
「これは、守りの宝石です」
リーナが、説明してくれた。
「身につけている人を、災いから守ってくれます」
「...」
「ずっと、幸せでいてください」
私は、涙が止まらなかった。
「ありがとうございます」
「...」
「本当に、ありがとうございます」
ガルドは、少し照れたように頭を掻いた。
「まあ、俺たちは仲間だからな」
「...」
「これからも、よろしく頼む」
私は、二人を抱きしめた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
前日、私は一人で部屋にいた。
明日、結婚式。
新しい人生が、始まる。
不安もあった。
でも、それ以上に、期待があった。
アレンと一緒に、この世界で生きていく。
どんな未来が、待っているのだろう。
ノックの音がした。
「水野、いるか」
アレンの声だった。
「はい、どうぞ」
アレンが、部屋に入ってきた。
「明日は、会えないからな」
「...」
「今日のうちに、話しておきたいことがあって」
アレンは、私の隣に座った。
「水野」
「はい」
「明日、俺たちは結婚する」
「...ええ」
「本当に、いいのか」
「...」
「俺と一緒で、幸せになれるのか」
私は、アレンの手を握った。
「アレンさん、私は幸せです」
「...」
「あなたと一緒にいられるだけで」
アレンは、私を抱きしめた。
「ありがとう」
「...」
「俺も、お前と一緒にいられて、幸せだ」
二人で、長い時間、抱き合っていた。
「明日、待ってるからな」
「はい」
「式場で」
「はい」
アレンは、部屋を出て行った。
私は、ベッドに横になった。
明日。
私の人生で、最も大切な日。
アレンと結ばれる日。
緊張と期待で、なかなか眠れなかった。
でも、やがて眠りに落ちた。
幸せな夢を、見た。
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