第26話 炎の洞窟
洞窟の中は、想像以上に複雑だった。
道が枝分かれしていて、どちらに進めばいいのかわからない。
「どっちだ」
ガルドが、分かれ道の前で立ち止まった。
「右か、左か」
アレンは、少し考えた。
「右に行こう」
「なぜ?」
「勘だ」
私たちは、右の道を進んだ。
道は、徐々に狭くなっていった。
そして、さらに暑くなった。
汗が、止まらない。
「水を飲もう」
アレンが、休憩を指示した。
私たちは、持ってきた水を飲んだ。
冷たい水が、喉を潤した。
少し休んでから、再び歩き始めた。
一時間ほど進んだところで、広い部屋に出た。
部屋の中央には、溶岩が流れていた。
赤く輝く、ドロドロとした液体。
「溶岩か」
ガルドが、呟いた。
「どうやって、渡る」
部屋をよく見ると、溶岩の上に、石の足場がいくつか浮かんでいた。
「あれを、飛び移るしかないな」
アレンが、言った。
「距離は、二メートルくらいか」
「ああ」
「飛べる距離だ」
アレンが、先頭で飛んだ。
石の足場に、見事に着地した。
「大丈夫だ。来い」
次に、ガルドが飛んだ。
そして、リーナ。
最後に、私。
私は、少し躊躇した。
溶岩に落ちたら、終わりだ。
「水野、大丈夫だ」
アレンが、手を伸ばした。
「俺を信じろ」
私は、深呼吸をして、飛んだ。
体が、宙に浮く。
そして、アレンの手が、私を掴んだ。
無事に、着地できた。
「よくやった」
アレンは、微笑んだ。
私たちは、いくつもの足場を飛び移った。
そして、部屋の反対側に到着した。
「ふう」
みんな、安堵の息をついた。
さらに奥へ進むと、今度は巨大な部屋に出た。
天井が高く、壁には炎が燃えている。
そして、部屋の中央に、何かがいた。
巨大な、炎の生き物。
犬のような姿だけれど、体は炎でできている。
「ファイアハウンド」
リーナが、震える声で言った。
「炎の魔物です」
ファイアハウンドは、私たちに気づいた。
そして、咆哮した。
炎が、口から吹き出る。
「避けろ」
アレンが、叫んだ。
私たちは、炎を避けた。
炎が、壁に当たって、弾けた。
「戦うしかない」
アレンは、剣を抜いた。
でも、相手は炎だ。
剣が、効くのだろうか。
アレンは、ファイアハウンドに斬りかかった。
剣が、ファイアハウンドの体を切り裂いた。
でも、すぐに炎が再生する。
「くそ、再生するのか」
ガルドも、大剣で攻撃した。
でも、同じだった。
「物理攻撃は、効かない」
リーナが、魔法を使った。
「水の矢」
水の魔法が、ファイアハウンドに命中した。
ファイアハウンドの炎が、少し弱まった。
「水が効く」
「もう一度」
リーナは、再び水の魔法を放った。
でも、ファイアハウンドは学習していた。
今度は、炎で水を蒸発させた。
「駄目です。炎が強すぎます」
私は、考えた。
炎の魔物。
水が効くけれど、炎で蒸発させられる。
どうすれば、倒せるのか。
その時、ふと気づいた。
炎には、酸素が必要だ。
酸素がなければ、炎は消える。
「リーナさん」
私は、叫んだ。
「風の魔法で、空気を吸い取れますか」
「空気を?」
「はい。ファイアハウンドの周りの空気を」
「...」
「炎には、酸素が必要です」
「なるほど」
リーナは、理解した。
「やってみます」
リーナは、杖を高く掲げた。
「風よ、すべてを吸い込め」
「真空の球」
ファイアハウンドの周りに、透明な球が現れた。
球の中の空気が、吸い取られていく。
ファイアハウンドの炎が、弱まっていった。
「効いてる」
アレンは、その隙を逃さなかった。
剣で、ファイアハウンドの核を狙った。
炎の体の中心に、小さな赤い石がある。
それが、核だ。
アレンの剣が、核に届いた。
核が、砕けた。
ファイアハウンドは、消滅した。
戦いは、終わった。
「やった」
ガルドが、嬉しそうに言った。
「水野殿の機転のおかげだ」
「いえ、みんなのおかげです」
リーナは、疲れた様子で座り込んだ。
「魔力を、かなり使いました」
「休もう」
私たちは、その場で休憩を取った。
リーナに、魔力回復の薬を飲ませた。
三十分ほど休んでから、再び歩き始めた。
洞窟は、さらに奥へと続いていた。
どれだけ歩いただろう。
二時間、三時間。
ようやく、出口が見えてきた。
明るい光が、差し込んでいる。
「出口だ」
私たちは、急いだ。
そして、洞窟を出た。
そこは、火山の火口だった。
巨大な穴。底には、溶岩が渦巻いている。
そして、火口の中央に、石の台座があった。
台座の上には、黒い宝石が置かれている。
闇の心臓の欠片だ。
「あった」
でも、台座に辿り着くには、溶岩の上を渡らなければならない。
「どうする」
ガルドが、聞いた。
「石の足場を作るしかない」
アレンが、周りを見渡した。
火口の縁には、大きな岩がいくつか転がっていた。
「あれを、溶岩に落として、足場にする」
「でも、溶岩に落ちたら、すぐに沈むぞ」
「いや、大きな岩なら、しばらくは浮いている」
アレンは、岩に近づいた。
「ガルド、手伝ってくれ」
「わかった」
二人で、大きな岩を溶岩に落とした。
岩は、溶岩の上に浮いた。
「よし、行けるぞ」
いくつもの岩を落として、台座までの道を作った。
そして、一つずつ、岩を飛び移っていった。
岩は、徐々に沈んでいく。
急がなければならない。
アレンが、先頭で進む。
そして、台座に到着した。
欠片を手に取った。
その瞬間、火山が揺れた。
「まずい」
溶岩が、激しく渦巻き始めた。
そして、溶岩の中から、何かが現れた。
巨大な、炎の龍。
「ファイアドラゴン」
リーナが、叫んだ。
火山の守護者だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます