試練と絆
第24話 王都への帰還と新たな決意
古代遺跡から戻る道中、私たちは疲労困憊していた。
特にリーナは、腕の怪我が痛むようで、時々顔をしかめていた。
「リーナさん、大丈夫ですか」
「はい、なんとか」
私は、馬車の中でリーナの腕を再度診た。
腫れは引いてきているけれど、まだ痛みがある。
「完全に治るまで、あと一週間はかかります」
「...」
「それまで、魔法は控えてください」
「わかりました」
アレンとガルドも、傷が完全には癒えていなかった。
特にアレンの右肩の傷は、古代遺跡での戦闘で悪化していた。
「アレンさん、無理をしすぎです」
「わかっている」
アレンは、少し申し訳なさそうに言った。
「でも、戦わなければならなかった」
「...」
「それはわかりますが、もっと自分の体を大切にしてください」
私は、アレンの傷を手当てした。
七日後、私たちは王都に到着した。
王城では、エリーゼが待っていてくれた。
「アレン、水野様」
エリーゼは、私たちを見て、顔色を変えた。
「みなさん、怪我を」
「大丈夫だ、エリーゼ」
「大丈夫ではありません」
エリーゼは、すぐに宮廷医を呼んだ。
私たちは、それぞれ治療を受けた。
宮廷医は、私の応急処置を見て、感心していた。
「素晴らしい処置ですね」
「ありがとうございます」
「水野様は、医術に長けていらっしゃる」
「...」
「おかげで、傷の治りも早いでしょう」
治療が終わった後、私たちは謁見の間に呼ばれた。
国王が、待っていた。
「アレン・ヴァルハイト」
「はい、陛下」
「古代遺跡の任務、成功したと聞いた」
「はい。二つ目の欠片を、回収いたしました」
アレンは、欠片を差し出した。
国王は、欠片を見て、頷いた。
「よくやった」
「...」
「残りは、あと二つだな」
「はい」
「南の火山と、西の海底神殿」
「ああ」
国王は、真剣な顔で言った。
「この二つは、さらに危険だと聞く」
「...」
「火山には、炎の魔物が棲んでいる」
「...」
「海底神殿には、水棲の魔物が無数にいる」
国王は、アレンを見た。
「無理をするな」
「...」
「命あっての物種だ」
「はい、肝に銘じます」
謁見が終わった後、エリーゼが私たちを自分の部屋に招いた。
「みなさん、本当にお疲れ様でした」
エリーゼは、お茶を用意してくれた。
「次の任務まで、しばらく休んでください」
「ありがとう、エリーゼ」
「いえ」
エリーゼは、私を見た。
「水野様、少しお話ししてもよろしいですか」
「はい」
私とエリーゼは、庭園を散歩した。
「水野様、あのお話、考えていただけましたか」
「...」
「この世界に、残るかどうか」
私は、少し考えてから答えた。
「まだ、答えは出ていません」
「...そうですか」
「でも、真剣に考えています」
「...」
「アレンさんと一緒にいたい、という気持ちは強いです」
エリーゼは、微笑んだ。
「それだけで、十分です」
「...」
「考えてくださっているだけで、嬉しいです」
エリーゼは、空を見上げた。
「水野様、私は思うんです」
「...」
「人生は、選択の連続だと」
「...」
「どの選択が正しいかなんて、わからない」
エリーゼは、私を見た。
「でも、自分の心に従って選択すれば、後悔はしないと思います」
「...」
「だから、水野様も、自分の心に従ってください」
私は、エリーゼの言葉に、励まされた。
「ありがとうございます、エリーゼ様」
その夜、私は一人で考えていた。
この世界に残るか、元の世界に帰るか。
エリーゼの言葉。「自分の心に従ってください」。
私の心は、何を望んでいるのか。
アレンと一緒にいたい。
それは、確かだ。
でも、元の世界の患者さんたちは、どうなる?
田中さん、川口さん、みんな。
彼らも、私を必要としている。
答えは、まだ出なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます