第3話 修行


「母上様っ、私も一手、お相手願います!!」

 イクリプスを叩きのめした後に、自分も手合わせしたいと願い出て来たのは、ミカエラと剣神咲耶との間に産まれた月影であった


 黒い長髪を三つ編みに纏め、クリッとした黒い瞳の奥にはメラメラと炎が揺れていた

 

「えっ、あ~うん、良いわよ♡おいで卍丸」


 ミカエラの呼び掛けに応え、聖剣卍丸が彼女の掌中に顕現する


「有難う御座います、母上っ!!」


 嬉々満面で腰に下げた十文字一徹を抜く月影

 この月影の身長とさほど変わらぬ長さの大太刀は、もう1人の母親である咲耶が剣神として祝福を与えた聖剣である

 アンデッドに特効を持ち、魔力を纏わせる事で形状変化し、敵の魔力攻撃を吸収してしまえるチート能力を持つ卍丸には敵わないが、十文字一徹も決して折れたり刃毀れする事も無く、常に万全の状態に自己保全出来た

 更に、持ち主の意思を読み取り、尤も効果的な剣筋に自動補正機能付きである


「何時でも良いわよ?」

「参りますっ!」


 転移が出来るミカエラに、一刀足の間合いは関係無いが、母親の咲耶と違い月影は転移出来ない

 ジリジリと間合いを詰めると、一気に突きを放つ

 が、ミカエラも半歩引くと、月影の突きに突きを返す

 十文字一徹の切先に卍丸の切先が正確に当たる

 ガッッ!

 カウンター気味に押されてよろけた月影は、それでも崩れた態勢のままクルリと身を翻すと、下段、上段、横薙ぎと連撃を放つが、尽くミカエラに捌かれてしまう


「こなくそっ!」

 大振りで振り下ろした刃は空を切る

 ( あっ、)

 刀が勝手に振り下ろしたまま脇の下を潜り後方へと伸びた

 トスッ

 月影の背後に転移したミカエラの胸を十文字一徹が貫く

 衣服を、肉体を裂き心臓に突き刺さる感触が掌に伝わる

 月影が慌てて振り返り、刀を抜くと、ミカエラの胸元から鮮血が迸り、月影の顔を濡らした


「ああぁーーーっ!?ご、ゴメンなさい!?」


「いや、大丈夫だ」


 ミカエラが傷口に手を翳すと、たちまち出血が止まり傷も治る

 不老不死のミカエラは例え首を刎ねられても死ぬ事は無い


「今のは一徹の能力だな?」


「はい … 」

 月影は普段は咲耶と鍛錬を重ねている

 ミカエラと同じ様に自在に転移する咲耶を相手に練習を重ねた結果、十文字一徹が転移しての背後からの攻撃を先読みして勝手に動いたのだ


「聖剣を使い熟してるじゃねえか、その調子だ♪」


「は、はいい!」


 月影の頭を撫でるミカエラはエルサエラの姿が見えないのに気付く

「あれ?エルサは?」


「エルサちゃんはカーマエルさんと修行の旅に出てますよ」


「また滝行か?」

「多分、温泉目当てだと思いますよ?」


「あ〜、確かに山の中には温泉多いもんなぁ、でもカーマエルの奴に温泉の良さが分かるのかな?」

 大天使の一人であるカーマエルは肉体を持たない魔力だけの存在だ


 頭の上から滝に打たれても、水は素通りしてしまう

 同様に、温かい温泉に浸かっても、果たして気持ち良さが分かるのだろうか?


「なんでも五臓六腑に染み渡るそうです」


「それ、酒飲んだ時に言う台詞だろ … って、駄目だ何か無性に呑みたく為って来た」

 ミカエラが酒を飲む為に帰ろうとすると、騎士団長のガラハッドが声を掛ける


「ミカエラ様、イクリプス様は如何致しましょう?」


「ん?気絶してるだけだから放っておいて大丈夫よ」

「はっ!失礼しました」


 ミカエラは練兵場の真ん中に突き刺さったイクリプスを置いて、帰った

 仮にどこか怪我をしていても、ドラゴンだから自己再生するから心配要らなかった

 

 

 

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