第2話 無常天限
「フォレストドラゴンの心臓なんて何に使うんですか?」
「うむ、ちょっとな …… 」
「 …… ?」
「実験よ、実験」
なんとなく歯切れの悪いペンティアムの返事に、疑問を持つが、アシュタローテに上手く誤魔化されてしまう
「へえ … でも、師匠もアーシュも不老不死でしょ?あっ、不老不死の薬を造るとか?」
「ミカエラ、私は不老だが不死では無いぞ?」
「えっ!?そうでしたっけ?」
「至高神なんだから、自分の親の事くらいちゃんと覚えておきなさいよ」
アシュタローテが呆れて言う
「うわヤバい、何となく自分の家族は皆、不老不死だとばかり思い込んでるわアタシ … って言うかアーシュの権能で作れないの?」
至高神と為ったミカエラが敬語を使うのはペンティアムただ一人である
聖女だった頃には、聖教会教皇のミレニアムに対し敬語を使っていたが、ミカエラが昇神してからは立場が逆に為ってしまった
「私にも出来る事と、出来ない事くらい在るわよ」
「ふうん?まっ、良いけど」
ミカエラは見落として居るが、創世の女神であったペンティアムの番である明けの明星ルシフェラの魂の分身であるアシュタローテに不可能なのは、己の神格よりも上位の存在に依る結果の書換えである
嘗てミカエラとクレセントの2人共、創造神エロヒームの呪いのせいで首を刎ねられた事が在る
元々ドラゴンで不老不死のクレセントも、その時点で不老不死に為っていたミカエラも平気だったが、大切な家族である戦乙女のサリエラを亡くしている
家族を護る為に犠牲となった彼女を蘇生させる事はアシュタローテにもペンティアムにも出来なかった
「お母さん」
大司教執務室の隣の部屋の扉からイクリプスが顔を出す
「フォレストドラゴンの心臓を持って帰ったら、僕の相手をしてくれる約束、お忘れですか?」
「あぁっ、ゴメン?忘れてたわ」
神と為っても、オッチョコチョイなのは変わらないミカエラである
聖都に在るミカエラの屋敷と大聖堂の大司教執務室、それにコムーネのミカエラ神殿は亜空間通路で繋がって居り、歩いて移動可能だった
大聖堂裏には嘗ての王城がそのまま残っており、中庭が騎士団の練兵場に為っていた
聖都にはミカエラ隷下の近衛騎士団が在り、普段は彼等の訓練に使われているが、ミカエラの家族も良く利用していた
ミカエラとイクリプスが歩いて練兵場に姿を現すと、訓練中だった騎士団全員が姿勢を正し整列する
「あー、訓練中ちょっと邪魔するわよ」
「構いません、全員退避!見学させて頂くぞ!」
「「はっ!」」
騎士団長ガラハッドの号令で騎士団は練兵場の壁際に掘られた塹壕迄移動する
ミカエラの家族達の訓練は、普通の人間には余りにも危険が大きい
「ミカ、魔法障壁で囲って頂戴?」
「はい、ミカエラ様♡」
ミカエラの呼び掛けで守護天使のミカエルが顕現し練兵場に魔法障壁を展開する
「イクス、頑張って下さいね」
ミカエルはミカエラの第一夫人でもある
「ありがとうございます」
礼儀正しくお辞儀を返すイクリプスはミカエラと10m離れて対峙すると軽く屈伸運動する
「じゃあ、いきます!」
イクリプスは正面からミカエラ目掛け突進する
魔力で身体能力を底上げするだけで無く、飛行する時の様に直接魔力で移動している
地上を音速で移動した為に、衝撃波で地面が抉れ砂埃で見えなくなる
ドガガガガガッッ!!
正面から突っ込んだ筈のイクリプスはミカエラの背後から連打を浴びせるが、ミカエラは全てを片手で捌いて見せる
ミカエラの腕が下がった所へ頭部を狙い回し蹴りを放つが、簡単に避けられてしまった
「蹴りは短く直線で、大振りじゃ当たらないわよ?」
ヌッと目の前に顔を寄せると、ミカエラはイクリプスの額にデコピンを打つ
バッッチィーーーーン!
一緒意識を失うが、100m程飛ばされて空中で押し留まると、イクリプスはミカエラ目掛けブレスを吐いた
ズッキューーーーンッ!
更にブレスに隠れる様に直ぐ後を突撃する
ミカエラはブレスにカウンターパンチを合わせ消滅させるが、その陰からイクリプスが身を翻し生やした尻尾で叩き付けて来る
スドオオン!
しかし、尻尾の一撃は大地に大穴を開ける
「!?しまっ… 」
イクリプスが頭上を振り返ると、そこへミカエラの手が伸び、イクリプスの頭を地面に埋めた
「アタシが転移出来る事を忘れちゃ駄目よ♪」
ピーンと立っていたイクリプスの尻尾がへニャリと垂れた
子供とは言えドラゴンの端くれだから、この程度で死んだりしないが、どうやら気絶している様だ
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