君が好きだと叫びたい
アガペエな呑兵衛
第1話 心臓
緑溢れるその森は、一見平和に見えるが鳥の囁きも獣の息吹さえ感じられぬ静寂と緊張に包まれていた
高さが100mを超える巨木が立ち並ぶ先は、枝葉が拡がり地面にまで陽光が届く事は無く、木々は苔と茸に覆われている
少年は高さ40m程の高さの枝から枝へと移動しながら、目的地へと静かに接近する
焦っては逃げられてしまうのは、前回の失敗で勉強した
慎重に気配を隠蔽しながら、周囲の魔素が濃くなるのを感じとると、移動を止めて魔素の一番濃い場所を特定する
( あそこか …… )
一見、何も無いただの窪地にしか見えないが、彼の目的はそこに居る
背中に背負っていた弓を手をすると、一緒に持って来た3本の矢をつがえ狙いを定める
この時点でも殺気や音を立てない様に慎重に動く
で無いと、気配に敏感で臆病な獲物は容易く逃げてしまう
ヒュッッ!
矢を放つと同時に、少年は空中高くへと飛ぶ
3本の矢が空気を切り裂き、己に向かい放たれたのを感じ取ったフォレストドラゴンは、擬態を解き矢の飛来する方向に対して魔力を集め、蔦を増殖させて物理障壁を展開した
スタタタンッッ!!
3本の矢が蔦の障壁に遮られたのと、ほぼ同時にフォレストドラゴンの頭は大地に縫い付けられる
ズドオオーーーン!
上空へと飛び上がった少年が、真上からフォレストドラゴンの頭を押さえつけ地面へと埋め込んだ
「お昼寝の邪魔してゴメンなさい」
少年は30mは在るフォレストドラゴンの身体を仰向けに返すと、尻尾の先で胸を切り開き脈動する心臓を抜き取る
ブチブチメリッ
ビクン!と痙攣したフォレストドラゴンはそれきり動かなくなる
だが、フォレストドラゴンクラスになれば心臓を抜かれた位で死にはしない
時間は掛かるが、やがて再生して何事も無かった様に復活するのを少年は知っている
その証拠に、息の根が止まったフォレストドラゴンの周りに苔や蔦が絡み付き、あっという間にその巨体を覆い尽くした
肉体の活動を止めても、フォレストドラゴンの魔力は存在し続け、この森の守護者として息づいて居る
少年はフォレストドラゴンの心臓を瓶に入れると、バックパックに大切に仕舞い、弓を回収すると空へと飛翔する
聖都に在る自宅に戻ると、母親が駆け寄って来た
「お帰り〜イクス♡♡♡」
「ただいま、お母さん」
「ちょっ、お母さん?恥ずかしいから止めて … 」
「んん~、もう少し♪」
彼は抵抗は無駄だと知っている
「おっ、戻ったかイクス」
家の中から声を掛けられ、漸くクレセントの抱擁から脱出出来た
「ただいま、お母さん」
もう1人の
心臓は瓶の中で、生きている時と変わらずドクドクと脈動を続けていた
「うん、生きが良いな!早速師匠に届けて来よう♪」
彼女はそう言うと姿が消えた
恐らく大聖堂に居る大司教の元へ転移したのだろう
イクリプスは未だ転移魔法は使えない
元々精霊龍の血を引く彼は、魔力で空を翔ぶのと魔法障壁の扱いには長けていたが、神や天使の様に様々な魔法を自由に使い熟せる訳では無い
「師匠〜♪頼まれてたフォレストドラゴンの心臓でえっす♡」
ミカエラが彼女の師匠であるペンティアムの執務室へ転移すると、先客が居た
「あら、アーシュ、居たの」
「居たの、とはご挨拶ね」
アーシュと呼ばれた女性は元魔王である
ミカエラが未だ聖女だった時に魂を呪縛から解放したのだが、その後何故か求婚されて、女性同士で結婚するに至った
因みに、ミカエラには9人の嫁と30人を超える愛妾が居る
何処に出しても恥ずかしい女誑しである
その中でも、互いの魂を分けあったアシュタローテは特別だった
「でも師匠、フォレストドラゴンの心臓なんて何に使うんです?」
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