龍神の巫女――山深き村で、未来を紡いだ巫女――

★★★第一部「龍神の生贄」

https://kakuyomu.jp/works/16818792436935822503

に続く第二部です★★★

――千年の眠りを破り、陶器の筒が土中から姿を現す。

潜龍窟の前。

地中レーダーの反応を頼りに掘り進めると、

漆で密封された経筒が、静かに横たわっていた。

蓋を開ける。

ぎっしり詰められた木炭の奥から現れたのは、

柿渋紙に包まれた三つの包みだった。

そして――

「……これ、おじいちゃんが真貴に持たせたお守りだ」

千年の昔、平安時代末期に戻って行った親友真貴からの手紙。

その瞬間、結衣の胸に、時を越えた鼓動が響き始める。

包みの底から現れたのは、

「第一之巻」「第二之巻」「第三之巻」と記された巻物。

仁は震える声で言った。

「これは……真貴が見た“平安末期の信濃”そのものよ」

LEDライトに照らされ、千年の時を越えて息を吹き返す。

結衣が巻物を開くと、そこには真貴の言葉が綴られていた。

――物語は、千年前へと遡る。

◆

飢餓に苦しむ村を救うために、

龍の洞に生贄として入った少女・真貴は、

千年後の二十一世紀の世界で十年を過ごし、

伝承通り、元の時代、平安時代末期の村へと戻った。

彼女が帰った村は危機の最中に会った。

真貴が龍の洞から村に向かおうとすると、

龍の洞に向かってくる村人たちと遭遇した。

彼らは縄で縛られた少女を輿に乗せていた。

「この子を……贄に？」

村を襲う赤斑瘡――麻疹。

次々と倒れる村人たち。

恐怖に駆られた村は、流れ着いた母娘を“穢れ”として追い詰めていた。

「龍神様は、人の子の贄を望まれてはいません」

真貴は少女を抱き寄せ、村人の前に立ちはだかる。

村に戻ると、祈祷を続ける良真和尚が震える声で告げた。

「……そなたの弟、小太郎も赤斑瘡に倒れておる」

胸が締めつけられる。

真貴は迷わず病人小屋へ向かった。

そこには、

高熱にうなされ、震える弟の姿があった。

「小太郎……」

看護学校で学んだ知識。

現代で身につけた医療の技。

そして、龍神の巫女としての覚悟。

真貴は、村人が恐れて近づこうとしない病人小屋に入り、

一晩中、塩湯を作り、身体を拭き、看病を続けた。

その傍らには、赤斑瘡で母を亡くし、

村人らに生贄にされかけた少女・ムメが寄り添っていた。

「ムメ……あなた、赤斑瘡にかかったのね」

小さく頷く少女。

真貴はその手を取り、静かに言った。

「一緒に、みんなを助けよう」

◆

夜明け。

小太郎が薄く目を開けた。

「……あねうえさま……？」

十年前に別れた姉の姿。

その声。その温もり。

「十年前と変わらぬ童のようですね」

涙が溢れ、二人は抱き合った。

だが、赤斑瘡との戦いはまだ終わらない。

村人たちを救うには、滋養のある食べ物が必要だった。

真貴は小太郎の弓を手に山へ向かう。

狙うは、龍神に捧げる贄――雉。

矢が放たれ、羽が舞う。

村の運命が動き始めた。

◆

千年の時を越えて届いた真貴の記録。

そこに綴られていたのは――

“歴史に名を残さなかった人々が、

知恵と勇気で生き抜いた、もう一つの平安末期”

『龍神の巫女』

いま、千年の時を越えて物語が開かれる。

★★★新年から本編を始めます★★★