山茶花
2-1
side瑞綺
隣に眠る、狼の腕をそっと撫でる。
筋肉質な白い肌に、3輪のサザンカ。
少し気になり、調べてしまった。
色によって花言葉が違うらしい。
影響された私の携帯の画面には、花の写真。
その画面を初めて見た愁は、困った顔で。
でもどこか嬉しげだったのを思い出す。
「瑞綺、もう起きてもいいか。漏れそう」
『え』
「いつまで腕触ってんだ。くすぐってぇだろ」
寝起きのシワ枯れた声でそう言い、裸のまま部屋を出て行った彼。
ちぇ。
貴重な楽しみの時間が終わりを告げ、服を着てリビングへ向かう。
課題、やらなきゃ。
大学生になった私は、課題に追われる日々を過ごしていた。
頑張って勉強をして入学をしたからには、良い成績を残したい。
こういうところだけ真面目な私は、ソファの下に座り最近手に入れたパソコンを開く。
「今日、花でも買いに行くか」
『……は?』
「花、買いに行くぞ」
『花?なんで急に』
「お前花好きなんだろ?」
そんなこといつ言った?
言った覚えがない。
「好きだから、画面花の写真にしてんだろ」
あぁ、何を勘違いしてるんだ。
『花は好きでも嫌いでもない。だから花屋は行かない。それよりロシア語教えろ』
再びパソコンに向き合う私に寄り、ヤンキー座りする半裸の狼。
「あ?じゃああの写真はなんだよ。てっきり花が好きなんだと…」
『愁の腕が……良いなって思ったから。他の花はよく知らねえよ』
ーーグイッ
「…へぇ。そういうことだったのか」
『気付いてたのかと思ってたのに』
「わかりづらい」
腕を引き、ソファで自分の上に私を座らせた彼の目はギラリと光っていた。
「だからたまに腕触ってんのか」
『っっ』
欲付いた目から逸らせば、顔を抑えられる。
『っ課題…したいんだけど』
「俺の次に構えばいい」
構うって。
課題に構うって。
なんなんだその言い方は。
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