三つの影と半分の月

JACKPOT031

三つの影と半分の月

夜の公園に、影が三つあった。

ひとつは、僕のもの。

ひとつは、知らない誰かが置いていったもの。

もうひとつは、人間のようでなにか違うもの。


夜空に浮かんだ半分の月は、

スポットライトのように影を順番に照らし、

数を数えているみたいだった。


知らない誰かが置いていった影は、

少しずつ大きくなり、僕に近づいてきて

「名前は?」

と、尋ねてきた。


答えようとした矢先、

妙な浮遊感と共に、

胸の奥が空っぽになり、

声も体も月に吸い込まれていった。


気がつくと、ぼくは地面に寝そべっていた。

体は真っ黒に塗りつぶされていた。


その夜から、ぼくは公園に留まった。


誰かが、影を連れてやってきた。

半分の月は、今日の主役たちを照らそうとしている。


今度は、ぼくから名前を聞いてみよう。

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