落ちこぼれのおっさんが推しの悪役吸血姫にTS転生無双 ~セカイの終末を防ぐため魔王と異能バトルして理想の百合ハーレムを作ります~

空下元

第1章 おっさん転生➡美少女吸血姫になる

第1話 セカイの中心で己の性癖を叫ぶ(ケ)モノ


「マジで使えねぇなッ! 志賀内しがないと書いて『クズ』と読むのかぁ!?」



 無数のダンボールが積まれた狭い倉庫に、上司であるMさんの怒号が鳴り響く。

志賀内しがない有人ありと』と書かれた『家畜証』を胸に下げたボクは、斜め45度の角度で頭を下げた。



「申し訳ありません!」

「ったくよぉ。今月中に倉庫を空けろと言っただろうが。物を売るのが営業の仕事だろ?」



 Mさんはダンボールを漁ると、中から『ぐろかわ』のキーホルダーを取り出した。


 ぐろかわとは『グロくて別に可愛くない』マスコットキャラクターで、一部マニアの間で話題になっていた。

 だが、ブームになる前に人気は下火に。

 今では誰も存在を覚えていない。



(ブサイクで存在感が薄い……。まるでボクのようだ……)



 ボクは、ぐろかわに一方的な親近感を覚えていた。

 黒髪で中肉中背、気弱で陰キャなオタク。

 それがボクだから。



「この在庫の山、どうしてくれんだ? 盆のクソ忙しい時期に倉庫が使えません……なんて本社に報告してみろ。オレのクビが飛ぶだろッ!」


「で、ですけど、ぜったい売れるから一桁多く仕入れるように指示を出したのはMさんで……」



 ウチはキャラクター雑貨のおろし売り会社だ。

 取り扱う商品は本社の指示で決定するが、ぐろかわを仕入れたのはMさんの独断。

 本社に許可を取ったと言っているが……この様子だと怪しい。



「…………おい、志賀内。おまえ、ウチに来て何年だ」


「5年、ですけど……」


「んじゃあ今年で28か。いい歳したアラサーのオッサンだよな? いい加減、ウチの社訓を覚えろよ」



 Mさんはイライラした口調で分厚いカタログ冊子を丸めると、ボクの脳天へ強烈な一撃を放った。



「ひとつ! 目上の者には絶対服従っっっ!! あと土下座ぁぁぁっ!!!!」

「申し訳ありませんっ!」



 ボクは考えることを放棄して反射的に土下座をした。

 あまりの勢いに、これが漫画だったら『ドゲザァァァッ!』という効果音が書き足されているところだ。



「てめぇらみたいな無能はな! 居ても居なくてもいい存在なんだよ! 働かせてやってるだけでもありがたく思えっ!!」


「はい! 働けて幸せです!」



 カタログで何度も頭を叩かれ、その度に床に額を擦りつけて謝り続けた。



 ……これで何度目になるだろう。

 Mさんはミスを誤魔化すため部下に責任を押しつける。

 パワハラ上等で日常的に暴力を振るってくる。


 今のご時世、どうしてそんな横暴が許されているのかと言うと……。



「アアっ、本当にイライラする……ッ! ドイツもコイツもオデさまに逆らいやがって!」



 Mさんの声が野太くなり、不自然に全身の筋肉が盛り上がる。

 着ていた背広が破ける。

 Yシャツのボタンが弾け飛ぶ。

 筋骨隆々の上半身を野獣のような体毛が覆った。


 何より異様だったのが頭部に生えた二本の大角だ。

 その姿はまるでゲームに出てくる牛頭半人の怪物ミノタウロスのようで。



 いや、……ではない。

 Mさんはノタウロスだ。バケモノは実在する。



「ブモォォォォォォォォッ!!!!」



 ミノさんは口から泡を吹きながら、両眼を真っ赤に血走らせる。

 暴走状態だ。今日は虫の居所が悪かったらしい。



「今回は全治何ヶ月だろう…………」



 これから起こる悲劇を予感し、悲観する。

 どうせ今回もストレスのはけ口として半殺しにされ、キズが治るまで倉庫の隅に捨て置かれる。



 ――――この会社地獄に囚われて5年。

 毎日のようにいびられ、殴られ、生死を彷徨さまよい続けた。



 1年目は、恐怖と痛みで夜も眠れなかった。

 2年経ったら痛みに耐えられるようになり、拷問を受ける時間が延びた。

 3年目と4年目で痛みを感じなくなり、他人事のようにこの地獄を受け入れた。

 そして、5年目は――――



「ブモブモうるせぇぇんだよ! いい加減、死んどけやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



 


 この地獄に留まるのはもうイヤだ。

 後先なんて考えず「うるせぇぇ! 知らねぇぇぇ!」と牛頭のバケモノにカウンターパンチをお見舞いした。



「ブモゥ!?」



 奴隷のように扱っていた人間に反撃されるとは思わなかったのだろう。

 ミノさん……ファ○キン牛野郎はパンチを顎に喰らい、そのまま失神した。



「気持ちいい~~~~~~~~!!」



 今日まで隠れて筋トレしてきてよかった。

 それなりの筋力がついたようだ。

 技術も何もない喧嘩パンチだが、バケモノに通じればそれでいい。

 どうせ半殺しにされるのだからと、自爆覚悟で暴れた甲斐があった。



「ニンゲン舐めんな!」



 勝ち台詞を捨てるように吐いて、裏口から外に逃げ出す。



(外にもお仲間がいるな……)



 倉庫裏にある喫煙スペース。

 ヤギ頭のバケモノが二匹、メェメェ言いながら談笑している。

 人間の真似をして背広なんかを着ていた。

 牛野郎の同僚だ。



(こちらには気づいてない。こっそり移動すれば一番近くの門から外に抜け出せる)



 衝動的に動いたが、思わぬチャンスが巡ってきた。

 外のセカイまであと一歩。手の届くところに自由がある。


 だけど、ボクは見てしまった。

 ヤギ頭の一匹が連れている家畜の姿を。



(若い女の子…………中学生か?)



 鎖付きの首輪に繋がれたその家畜は、中学生くらいの若い女の子だった。

 見すぼらしい薄布を身にまとい、頬は痩せこけている。

 元々は美しかったであろう黒い長髪を埃まみれにさせていた。


 ボクと同じように、ある日突然この地獄に連れて来られたのだろう。

 現実世界を模倣した、人間を家畜とするバケモノ上位の狂ったセカイに。



「あ…………」



 物陰から様子を窺っていたら、家畜の子と目が合ってしまった。



「ええい、くそう……っ! どうしてボクはいつも……!」



 次の瞬間には体が動いていた。

 倉庫に戻り、消火器を失敬する。


 バケモノの存在以外は現実と変わらない。

 ボクは消火器を手にすると、ヤギ頭たちの死角から近づいてレバーを引いた。



「ここは禁煙だ!」

「……っ!?」



 消火剤が噴きだして周囲が白煙に包まれる。

 突然の噴煙に戸惑うバケモノたち。

 我ながら後先考えてなさすぎる。



「こっちだ! このまま逃げるよ!」



 ボクは女の子の手を掴むと、後ろを振り返らず外門まで走った。

 あとはこのまま外を目指すだけだ。

 この地獄から逃げ出して……。



「ッ……!」



 外へ踏み出そうとしたその瞬間、見えない壁に行く手を阻まれる。



「なんだよこれ……っ!」



 透明の壁は、会社の敷地と外界を遮るように張り巡らされていた。

 叩いても音はせず、反動もない。

 向こう側が見えるのに先に進めない。

 まるでSF映画に出てくるバリヤーみたいだ。



「このセカイは閉ざされているの」

「……ッ!?」



 突然、首に鎖を巻かれる。

 後ろを振り返ると、ボクが助けたはずの女の子に襲われていた。



「おじさんもワタシの同類だと思ってたのに……。愉しくなかった?」


「愉しい? この地獄のどこが……!?」


! 可愛い動物さんたちに囲まれて毎日のように責め苦を味わう……。これ以上の楽園はないでしょう!?」


「……!? ??????」



 女の子の言い分は、まったく理解ができない。

 ヒトの趣味をとやかく言うつもりはないけど……。



「他人を巻き込むな! オナニーなら独りでやってろ!」

「まあ卑猥。セクハラで訴えます」

「そんな状況か!」



 本当にそんな状況じゃなかった。

 首に鎖を巻かれて絶賛殺されかけている。

 だが、このまま絞め殺す意図はないらしい。

 逃がさないように首輪をつけて、この場に留めている。そういうことだろう。



「これまで多くのニンゲンの魂を閉じ込めてきたの。けれど、ワタシの趣味を理解してくれるヒトがいなくて……。おじさんならわかってくれるよね?」


「どうしてボクなんだ!? ボクにそんな趣味は……」


「だって……。死ぬ直前まで家畜として働いていたじゃない」


「……!?」



 死ぬ前……? それってつまり……。



「ボクは死んでいる? ここは地獄なのか?」


「見事な家畜っぷりだったわ。……ああ、アナタたちのセカイでは会社に奉仕するニンゲンを『社畜』と言うんだっけ?」


「質問に答えてくれ! ボクは死んだのか!?」


「そうよ。働き過ぎて肉体が耐えられなかったの。心臓発作であの世逝き」


「心臓発作…………」



 死因を教えられた瞬間、覚えのない光景が脳裏をよぎった。

 激務に激務を重ねて不眠症になり、朦朧とした意識のまま倉庫に積まれたダンボールを持ち上げようとして…………。



「ワタシは死者の魂から記憶を読み取れる。家畜のように文句も言わず働くおじさんの姿に感銘を受けたわ! アナタみたいなニンゲンを眷属にしたい。そう思って楽園に招いたの」


「楽園? この地獄が?」


「そうよ。どうして地獄だなんて思うの?」


「ボクはこれまでずっと辛い目に遭ってきた! それなのに死んでも苦しみを味わうなんて……。これを地獄と言わずなんて言う!」



 思い出した。

 Mさんはボクが務めていた会社の上司だった。

 おそらくボクの記憶を読み取って、生前の苦しみを再現したのだろう。

 家畜に家畜扱いされたいと願う、特殊性癖を持つ女の子によって。



「これ以上付き合ってられるか! ボクは外に出る!」



 鎖なんて無視して、外界へ通じているであろう門へと歩みを進める。



「生きても地獄、死んでも地獄だと言うなら、ボクの好きなようにする! したい事をするんだ!」


「ふ~ん? おじさんがしたい事ってなぁに?」


「ボクが死ぬ前にやりたかった事。それは……」



 ボクは拳を握りしめると。



「美少女に生まれ変わって、百合ハーレムを作ることだぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 セカイの果てまで響くように、己の性癖を大声で叫んだ。


 次の瞬間、門の向こうから目映い光が溢れて――――



 ****



 不意に意識が戻る。

 戻った瞬間、急激な吐き気を覚えて胃の中のモノをすべて戻した。



「げほげほっ…………! うげぇ、えぇぇっぷっ!」



 リバースに続くリバースに、消化器官が悲鳴を上げる。

 血液混じりの黒い吐瀉物が、ビチャビシャと音を立てて地面にまき散らされる。



「ここは…………」



 顔を上げて周囲を窺う。

 気がつけば、何の変哲もない児童公園にいた。


 時間帯は夜。

 季節は春だろうか。生温かい風が頬を撫でる。



「頭が痛い……」



 耳鳴りがする。軽い目眩も覚える。

 まるで二日酔いのようだ。それに――



「すごく、喉が渇く…………」



 脱水症状を起こしているのだろう。

 水を求めて近くの公衆便所へ向かう。



「ていうか……何がどうなったんだっけ…………」



 気を失う直前の記憶が曖昧だ。

 ボクは倉庫にいたはずじゃないのか?

 それと変態趣味の女の子に殺されかけていたような……。


 フラフラとした足取りのまま、便所に到着した。

 洗面台の鏡に視線を向けると……。



「えっ…………? 女の子になってる…………?」




 ---------------------------

(作者のコメントです)


 初回は長めでお送りしております。


 ※

 1話をお読みいただきありがとうございます。この作品はエログロありです。カクヨムさまの規定内の描写に留めておりますが(R15)、不快感を覚える方はブラウザバックをオススメいたします。

 え? エロいのもグロいのも好き? オッケー。それじゃあ続きを見ていこうか。


 ※

 なお、この作品はカクヨムコンに参加しております!

 カクヨムコンではみなさんの応援=☆を押すと評価があがり、予選突破する仕組みです。

 おもしろい、先が読みたい! と思ったら是非☆評価やブックマークよろしくお願いします!

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