第2話 生き返る条件
「恋愛成仏させるってどうするんすか?」
「その女が生きてた頃の世界でその女が好きだった男の姿になり恋愛してハッピーエンドにしてその女と両想いのキスをできたら女は満足して成仏して天国へいく」
「ええ!? 俺は女と付き合ったことないし女とキスしたことないんすけど!」
俺は高校三年生だが今まで一度も女と付き合ったことがない。
恋愛初心者の俺にはハードル高くねえか?
しかも恋愛だけじゃなくてその女とキスしないとなんだろ?
「ん? そこは気合と根性と愛でやるのじゃ!」
「そんな無茶ぶりっすよ!」
「ではこのままお主はあの世行きじゃぞ?」
「やらせていただきます」
死ぬよりは女と恋愛して女とキスをした方がいい。
というより絶対そっちの方がいい。
だって女と恋愛してキスすれば徳というのが上がって生き返れるんならそんなおいしい話はない。
「あ、ちなみにここに来る女たちはお主とは別世界の女じゃからな」
「ええ!? 異世界の女ってことっすか!?」
異世界の女ってエルフとかか?
いやそうとも限らないよな。
普通の人間のような異世界人だって当然いるだろうし。
どういう異世界なんだ?
まさか獣人とか出てこないよな。
ケモ耳ぐらいだったらまだ恋愛できるけど完璧「獣姿の女」とかだったら?
そんなん俺ムリだよ! 両想いになれる自信ないって!
いや待て。まだ獣でも甘いかも身体がモンスターみたいな化け物だったら?
絶対ムリ!!
バッチイイィィィーーーン!!
「いっってえええええぇぇぇーーー!!」
再び俺の頭を襲う恋愛ババアの武器。孫の手。
「お主。何を考えておるんじゃ! 異世界の女じゃからと言っても基本的に人間と同じ姿だから安心せい!」
「え? もしかして俺の考えてること分かるんすか?」
「お主の考えぐらい読めなくてはこの商売なんかできぬからな」
俺の考えがこの恋愛ババアに筒抜けなら気をつけよう。
恋愛ババアのクソババア。
バッチイイィィィーーーン!!
「いっってえええええぇぇぇーーー!!」
「そんなに死にたいならわしがお主の頭かち割って今すぐ死なせてやろうか」
「す、すみませんでした……」
本当に考えが伝わるんだな。
「お主も納得したところで恋愛成仏に関するいくつかのルールだけは教えてやろう」
「お願いします」
俺は恋愛ババアからルールを聞く。
「まずはこの小屋には生前悲しい恋を抱いたまま死んだ女の霊がやってくる。その女たちは生きてる時に自分の恋愛が叶わずに死んでしまった女たちじゃ。それ故に成仏ができん」
「それは可哀想っすね」
「そうじゃ。そしてわしが作るスープを飲むとその女の生前の世界になる。その時にお主はその女の好きだった男の姿になる」
「え? 俺が?」
「そうじゃ。その女が王子様が好きだったら王子様に死刑囚が好きだったら死刑囚になる。そしてそこでお主はその女と恋愛してハッピーエンドにして両想いになりキスをすれば女は満足して成仏できて万々歳じゃ。ちなみに両想いでする以外のキスはノーカウントじゃからな」
万々歳は分かるが王子様と死刑囚って差があり過ぎだろ。
ん? 死刑囚?
「もしその女の生前の世界で俺が死ぬようなことがあったらどうなるんすか?」
「バッドエンドじゃ」
「じゃあ、もしその女と恋愛できなくて両想いになれずキスができなかったら?」
「バッドエンドじゃ」
「バッドエンドって死ぬってことっすか?」
「当たり前じゃ。ハッピーエンドじゃなかったら行く先はバッドエンドしかなかろう」
「それって俺にかなり不利な条件なんじゃ!?」
「ええい! つべこべ言うんじゃない! お主は男じゃろうが! 気合と根性と愛で両想いになりキスをするのじゃ!」
マジっすか。恋愛初心者の俺には無理ゲーに近いものがあるんじゃ。
でも確かにやらねば生き返れない。
「分かりました」
「それにその世界は死んだ女が望む世界だから生前とは違うストーリー展開になる。そして女を一人成仏させれば徳が1ポイント上がる。そのポイントを貯めればお主は生き返る」
ポイント制なのか。
「ちなみに何ポイント貯めれば生き返れるんすか?」
「ノーコメント」
そこだけノーコメントかよ!
「お主が規定のポイントに達したらお主の名前を返してやる。そうすればお主はちゃんと生き返れるから安心せい」
「え? 俺の名前?」
そこで俺は自分の名前が思い出せないことに気付いた。
それ以外の自分の記憶はある。
「名前が思い出せない」
「当たり前じゃ。それがここのルールの一つじゃからな」
「じゃあ、俺の仮の名前ってあるんすか?」
「そんなもん必要ない。ここにはわしとお主しかおらん。お主はお主でよかろう」
それもそうだからまあいいか。
仕方ない。女と恋愛してハッピーエンドになってその女と両想いのキスをして恋愛成仏させてポイント貯めて生き返ろう。
異世界恋愛成仏 リラックス夢土 @wakitatomohiro
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