異世界恋愛成仏
リラックス夢土
第1話 恋愛ババア
俺の最後の記憶は車の急ブレーキが聞こえて身体に強い衝撃を受けたことだ。
そして俺は目を覚ました。
「あれ? ここどこ?」
目を覚ました時にいたのは小さな小屋。
木造の一目で古いと分かる昔話に出てきそうな小屋の床に俺は寝ていたようだ。
俺が上半身を起こすと声が聞こえる。
「ようやく目が覚めたか。お
「え?」
俺に声をかけて来たのはしわくちゃな顔の
俺の前に立って孫の手で背中をかいている。
「え? 誰っすか?」
「わしは
「へんたいババア?」
バッチイイィィィーーーン!!
「いっってえええええぇぇぇーーー!!」
その婆さんの孫の手が俺の頭にヒットした。
俺は叩かれた頭を手で押さえる。
痛みでチカチカと星が見えた。
なんていう馬鹿力なんだ!? この婆さん!
っていうかその孫の手って鉄の棒でできてるんじゃないだろうな!?
「誰がへんたいじゃ! 恋愛ババアって言うたのじゃ!」
あ? 俺の聞き間違いか。
「すみません。で、その恋愛ババアさんがなぜここに?っていうかここどこっすか?」
とりあえず現状を把握しなければと恋愛ババアに訊いてみる。
「お主は今お主の世界で意識不明で死にかけとる」
脳裏に自分の最後の記憶が蘇った。
「そうだ! たしか横断歩道を横切ってたら車が突っ込んできたんだった。ん?ってことは俺は死んだのか!?」
「誰が死んだと言うた。死にかけてるというたのじゃ」
恋愛ババアは孫の手で背中をかく。
いや、死んでなくても死にかけてる状態で病院のベッドにいるんじゃなくてこんな怪しい婆さんとか出てきたらそこは地獄の一丁目じゃないのか?
「ここは死後の世界なんじゃ?」
「死後の世界ではない。死後の世界の一歩手前じゃ」
「それなら死後の世界と同じなのでは?」
「同じではない。なぜならお主はまだ完全に死んではおらぬし元の世界に生き返ることも可能じゃからな」
そうか。俺は完全には死んでないのか。
じゃあ、さっさと生き返ろう。
「じゃあ、俺は生き返りますんで、さようなら」
俺は立ち上がり小屋の外に出ようと扉を開けようとしたが押しても引いてもビクともしない。
なんだこれ!? 開かねえじゃねえか!?
「どこに行くんじゃ?」
「え? 生き返るために元の世界に帰るんっすけど?」
バッチイイィィィーーーン!!
「いっってえええええぇぇぇーーー!!」
恋愛ババアの孫の手が再び俺の頭に振り下ろされた。
俺は頭を押さえる。
「何もせず生き返られるほど世間は甘くはないわ! お主!」
「だ、だって、それじゃあ、何をすればいいんすか?」
「生き返りたければここにやってくる悲しい恋を抱いたまま死んだ女たちを
恋愛成仏ってなんだ?
しかも悲しい恋を抱いたまま死んだ女ってやっぱりここは死者が来る世界じゃねえかよ!
だが生き返るために必要な条件は聞いておくに限る。
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