第三章:残酷な感謝状

事件は解決した。警察が到着し、弁護士は連行された。

御子柴は「あー、めんどくせ」と言いながら、報酬の小切手を受け取った。その額は、僕の月収の半年分だった。

僕は、帰り支度をしていた。敗北感で胃が焼けるようだった。名探偵にはなれない。努力は才能に勝てない。この世は結果がすべてだ。

「あの、相田さん!」

呼び止められた。大河内家の長男だった。

僕は身構えた。無能な探偵だと罵られると思ったからだ。

「本当にありがとう。君のおかげで助かったよ」

長男は深々と頭を下げた。

「君が直してくれた事業計画書のおかげで、銀行の融資が通りそうなんだ。それに、妹も君に話を聞いてもらってから憑き物が落ちたように穏やかになった。電球も、扉の軋みも……正直、事件の解決より、君が来てくれて家の中が整ったことの方が、僕らには実質的な救いだったよ」

そして、彼は言った。

「君、探偵なんか辞めて、うちで総務として働かないか? 倍の給料を出すよ」

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