第7話 木山宏美への復讐3



「何なのよ! この写真は!」



 宏美は郵便受けに入っていた封筒の中の写真をテーブルに叩きつけた。

 俺はその様子を姿を消して見ている。


 叩きつけられた写真は俺が撮った義彦と真夜の浮気の現場写真だ。

 写真を撮影した俺はそれを宏美のアパートの郵便受けに入れて置いたのだ。


 宏美の顔が悔しそうに歪む。



「どうして次から次へと私の夫は浮気するのよ! 今度こそ、今度こそ、浮気されないように平凡な男を選んだつもりだったのに…」



 クシャリと写真を握り潰した宏美の恨めし気な顔を見て俺は愉快な気分になる。



 義彦の浮気は俺が仕組んだものだが最初の二人の旦那の浮気は俺のせいじゃないぜ、宏美。

 お前に魅力がなかっただけだろ? それとも性悪な性格のせいか?


 アハハハハッ!! ざまあねえぜ!!


 それにしても浮気されないように平凡な男として三人目の夫にされた義彦も哀れな気がするな。

 今回の義彦の浮気は大目に見てやれよ、宏美、ククク。



 荒れた宏美が部屋の中の物を手当たり次第に壁に投げつけた。

 茶碗や皿などが割れて派手な音が響き渡る。



「もう絶対、義彦は赦さないわ!」



 そうだよな。お前は自分が馬鹿にされることが嫌いだもんな。

 自分だけが可愛いってことは10年経っても変わらないか。だがその方が俺も復讐し甲斐があるから精々派手に怒れよ、宏美。



 物が壊れる音が俺の耳には心地よく感じるくらいだ。

 隣りの部屋の住人は驚いているかもだが。


 そこへ義彦が帰宅した。

 部屋の中の惨状に義彦は目を瞠る。



「どうしたんだ! 宏美」


「どうしたもこうしたもないわよ! 何よ、この写真は!」


「…っ!? な、なぜ、こんな写真が!?」



 浮気現場の写真を突き付けられた義彦の表情が固まる。

 そして慌てて義彦は弁解を始めた。



「ち、違うんだ! これは別に浮気なんかじゃ……」


「へえ、浮気じゃないのにあんたは女とホテルに行くの? しかもハメ撮り写真まであるじゃないの!」


「そ、それは…」



 義彦が思わず言い淀む。

 すると宏美がさらに勢い付いた。



「もういいわよ! 出てって! あんたとは離婚するから! 明日離婚届けにサインしてちょうだい!」


「ひ、宏美! 待ってくれ! 俺は…」



 義彦の言葉など聞かずに宏美は義彦をアパートから追い出す。



 ククク、これで三度目の離婚か。

 宏美の奴は相変わらず短気だな。だがまだまだこんなもんじゃ終わらせないぜ、宏美。



 義彦はしばらく外で宏美の名前を呼んでいたが諦めたのかアパートから離れて歩き出した。



 さて二人の離婚は決定だがただ離婚させても味気ない。

 義彦を使ってもうちょっと味のある離婚劇にしてやろう。



 アパートから離れて行く義彦を見ていた俺は宏美のアパートの陰に男がいることに気付いた。

 その男は宏美の部屋をチラチラと見ているようだ。



 あの男は誰だ?



「ノア。いるか?」


「はい。何でしょうか? 魔王様」



 俺の問いかけにすぐに秘書のノアが姿を現した。



「あの宏美のアパートを見ている男が誰か分かるか?」


「え~と、少々お待ちください」



 ノアはいつもの手帳を取り出して確認する。



「あの男は宏美の二番目の夫の弘和ひろかずという男です」


「なんでそんな男が今更宏美のアパートに現れるんだ?」


「情報では弘和は自分が浮気したものの宏美との離婚についてかなりごねたとありますので宏美にまだ未練でもあるのかもしれないですね」


「未練? あの宏美に?」



 俺からすれば宏美と離婚した方が弘和の幸せになる気がするが世の中には宏美のような性悪女でも未練を残す男が存在するらしい。



 自分から浮気しといて離婚した後も元妻のストーカーか?

 ろくな男じゃないがそれならこの弘和にも宏美を地獄に落とす手伝いをしてもらうか。


 使える駒は最大限使わせてもらうぜ。

 せっかくお前のような性悪女でも好いてくれる男がいるならそれに応える義務がお前にはあると思うからな。



 俺はニヤリと笑う。



 アパートの中では宏美が泣きながらまだ騒いでいた。

 派手に物が壊れる音が響き続ける。



 おいおい、アパートなんだから静かにしねえと苦情が来るぞ、宏美。

 まあ、お前は人の迷惑なんか昔から考えない女だよな、ククク。

 

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復讐のバトンタッチ リラックス夢土 @wakitatomohiro

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