第4話

14キロ地点にて…


14キロ地点は不気味なほど静まり返っていた。聞こえるのは夜行性の虫の音と、松林を揺らす風の音だけだった。アットの大型クルーザーバイクのヘッドライトが、人影を照らしていた。パンは用心深く近づいた。彼の白いシャツは暗闇の中でまだ輝いていた…


以前、クン・ウィポンがパンを、友人と報告書を書いていると嘘をついた場所に降ろした後…高級車が視界から消え、パンは安全を確信するとすぐに、アプリで14キロ地点の待ち合わせ場所まで配車を依頼した。




____


アットはすぐに顔を上げなかった。埃っぽい芝生の上に寄りかかり、ペンチとレンチを手にしていた。金属部品が周囲に散らばっていた。


「パンさん、3分遅れたようですね…」アットはまだうつむきながら言った。「でも、遅くても来ないよりはましです」


「先生、予定通り来ました…」「私があなたの言うような『歯車』じゃないと証明するためです」パンは十分な距離を保ちながら答えた。


アットは小さく笑った。顔を上げた。頬にはかすかに黒い煤が付着していたが、目には謎めいた、狡猾な輝きが宿っていた。


「ならば証明しろ…」彼は黒いエンジンオイルに浸した布切れをパンの足元に投げつけた。


パンは嫌悪感と衝撃の表情で布切れを見つめ、後ずさりした。「これは何だ?」


「このエンジンは詰まったオイルで窒息している。君の命と同じだ…外見は良さそうに見えるが、中が詰まっている」アットは冷ややかに立ち、取り外したオイルタンクを指差した。


「しっかりしていて。バルブを掃除するから」とアットはオイルリザーバーバルブを握ったまま言った。


「わ…無理。服が汚れちゃう」とパンは恐怖に震えながらためらいがちに言った。


アットは立ち止まり、パンをじっと見つめた。


「服が汚れるのが怖いの?それとも、手が汚れたらかつての完璧な紳士に戻れなくなるのが怖いの?」「選べ、パン…この偽りの完璧さをただ見ているのか、それとも、内部がどうなっているのかを知るために、自ら汚れに身を任せるのか?」


パンは唇をぎゅっと結んだ…怒りと反抗が心の中でぶつかり合った。彼は父親の言葉、ウィポーン夫人の監視の視線を思い浮かべ、そして決断を下した…


パンが芝生にひざまずいた瞬間、高価なスラックスは土と砂で汚れた…しかし、彼はもうそんなことは気にしていなかった。 硬く冷たい金属製のバケツを掴もうと手を伸ばす前に、彼はつるつるした油のような液体が体中を滑り抜けるのを感じた。黒い液体が指の間を流れた瞬間、パンは何かエネルギーが…体中を駆け巡るのを感じた。それはねばねばして、粘性があり、臭いもした…しかし、それは彼に「真実」と呼ばれるものの「重み」を感じさせた。


「じっとしていろ…」アットは柔らかくも毅然とした声で命じた。


「私がバルブを押した時の音を聞いてみろ…聞こえるか?それは新たな始まりの音だ。」


パンは薄暗い光の中で、黒ずんだ自分の手を見つめた。明日はウィポーン先生のためにたくさんの嘘をでっち上げなければならないだろうと分かっていた…しかし、この瞬間、手に感じる「本当の」感覚は、これまで学んだどんな教科書や授業の理論よりも強烈だった。

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