第3話

翌朝、パンは会議報告書の作成で夜更かししたせいで、軽い頭痛に襲われて目を覚ました。父の望み通り、自分の実力を証明しようとしていたのだが…不思議なことに、バックパックの中のナッツのざらざらとした錆びた感触に比べれば、数字はぼんやりとしか見えなかった。


「ブラックコーヒー、砂糖抜きです、パンさん。あなたのスケジュールに合わせて用意しましたよ」


パンがダイニングテーブルに歩み寄ると、ウィポーンさんは優しい笑顔で言った。彼女はパリッとしたグレーのスーツに身を包み、髪はきちんとセットされていて、一本の乱れもなかった。


「ウィポーンさん、ありがとうございます…今日、父はどんなことをおっしゃいましたか?」


「会長は今朝の報告書の要約に満足していたのですが…『余計なことに時間を無駄にするな』と伝えてほしいと頼まれました。いつもより15分も遅く起きたことに気づいたそうです」


ウィポーンさんはそう言って、タブレットを優しくパンの前に置いた。 しかし、彼女の言葉はパンの背筋を震わせた。まるで優しく平手打ちを食らったようだった。


15分…こんな些細なことでも、目に見えてわかる。


パンはタブレットのスケジュールを見下ろした。午後4時まで授業があり、その後ウィポーン先生が迎えに来る。午後8時からのチャリティガラに参加するため…何かしなければ、メモに書かれた「14キロ地点」には到達できないかもしれない、と彼は気づき始めた。


_____


大学で、パンは授業中、昼食の時間までぼんやりと過ごしていた。彼はナブダオを呼び出して、人目につかない隅で話をすることにした。


「ダオ…ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ」パンは、ほとんどささやくような小さな声で言った。


ナブダオは片眉を上げた。 「おやおや、パン、助けを求めるなんて初めて見たよ。どうしたんだ?まさか、誰かを口説き落とすためのお見合い相手を頼むとか…?」ナブダオは小さく笑った。


パンはそれを聞くと、「いやいや…」と言い、何か悪いことをして誰にも知られたくない人のように、ぎこちなくナブダオに囁いた。


「そこに行く…14キロ地点だ。」


ナブダオは少し間を置いて、少し目を見開いてから、パンが今まで見たこともないような満面の笑みを浮かべた。「やった!やっと!でも、どうやってウィポーンさんからこっそり逃げるんだ?」「あの人、耳がパイナップルみたいだ」パンはもう他に選択肢がないとでも言うように、少し間を置いた。その時、突然、ロケットのようにパンの脳裏にアイデアが閃いた。


「ウィポーン先生に、先生の家でグループレポートを作らないといけないって伝えておくよ…父は重要な研究プロジェクトにしか許可してくれないんだ。ウィポーン先生が確認の電話をしてきたら、確認の手伝いをしてほしい。できれば、ウィポーン先生に確認するための証拠として、図書館の写真か先生の家の本の山の写真を送ってくれ…」


先生が反応する前に、ナブダオは親友をじっと見つめた。


「ふーん、パンさんらしい計画だね…わかった、手伝うよ。でも条件があるんだ。」


「何?」パンが尋ねた。


「パンさん、そこに着いたら…自分に問いかけるのを忘れないで。自分が見ているものが本当に自分がなりたいものなのか?」


ナブダオが言い終えると、彼女は口を尖らせてパンの肩を軽く叩いた。


「ウィポーン先生のことはあなたが担当する。監督である私が…『表舞台』の準備は自分でするわ。」


パンは震える手で携帯電話を手に取り、ためらいがちにクン・ウィポンにメッセージを入力した…そう、こんな風になったのは初めてだった。もしこれが普通の状況なら、いつものようにメッセージを入力するだけだった…しかし今回は違った。まるでロボットのように、彼の後をついて回る影のような存在に、彼は嘘をついていたのだ。


彼は緊急の報告と、事前に用意しておいたナブダオの家の座標を送信した…そう!パンはアトに会いに行くつもりだった…たった1時間だけ。そして、時間通りに待ち合わせ場所でクン・ウィポンを待つつもりだった!


しかし、その最初の一歩を踏み出した瞬間…彼は自らのために敷かれた道を踏み外そうとしていたのだ。そして、それが彼の人生を永遠に変えることになるとは。

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