第6話
「よし、到着だ、曽場」
「遠くまで来ちまったな」
「な」
関東から観光を挟みながら車を走らせ、夕方、見晴らしの良い海岸に到着した。
冬という季節柄、観光客の姿はなく、波音だけが響き、キラキラとした海が目の前に広がる。
「寒いだろ。温かいコーヒー」
「さんきゅ」
温かい缶を手渡し、それを飲む。
「ほい、近ちゃん」
「ん?」
「近ちゃんも飲んだら? か、間接チューなんて……気にしないだろ?」
「……顔が真っ赤なのは曽場だろ」
「……うん」
雰囲気も相まって恥ずかしく感じる。
笑みを浮かべながら近ちゃんは受け取ったコーヒーを飲み、そのまま砂浜に腰かけた。
「尻、汚れるぞ」
「気にすんな。ああ、腰痛ぇな。って曽場も座ってんじゃねぇか」
二人で横に並び海を眺める静かな空間が心地よい。
横にいる近ちゃんの肩に頭を乗せる。
今日はちゃんと感触が分かり、とても嬉しい。
「誰も泳いでないな~」
「曽場、泳ぎできるっけ?」
「なんだ? あたしの水着姿見たい?」
「どうだろうな」
近ちゃんの視線があたしの体に移る。
「でかい方いいか?」
「そりゃあ、まぁ」
「近ちゃんも男だな~」
心の底からバカみたいな話ができるのが楽しいし、いつまでもこの時間が続いて欲しい。
「また、来ような」
「え? 近ちゃん、今なんか言った?」
「……曽場の水着姿、見たいかも……」
少々恥ずかしそうにする近ちゃんの顔は夕日に照らされてよく見えない。
あたしは追いかけるように立ち上がり、波打ち際へスタスタ歩いた近ちゃんに抱き着いた。
「何だよ、いきなり」
「夏にあたしの水着姿で悩殺してやるからな。覚悟しろよ」
「おい離れろ、当たってるって……すまん、勘違いだ」
「なんだと、この野郎。よく見ろ、感じるだろ!」
「おい、危ない……ああっ」
バシャッと二人して海に転び、びしょ濡れになった。
「ふはは。曽場といると楽しいな」
「ははは。あたしも」
二人で腹の底から笑い合い、水をかけ合い、時間を忘れて遊んだ。
その結果。
「ったく、近ちゃんがガキみたいにバシャバシャかけるから」
「悪いって」
「一泊させろ。このままじゃ帰れん」
「マジ? 仕方がない。ほれ、スマホ。宿探せ。着替えは?」
「あるぞ」
「最初から泊まる気だったのか……」
「どエロイ下着持って来てるぞ~」
車を出す直前にポケットの中からスマホをあたしに向かって渡した。
あたしは予約アプリで近くの宿を探す。
「近ちゃん、ここでいい?」
信号待ちの瞬間にスマホの画面を近ちゃんに見せた。
「あ? 高っ。どこのホテルだよ」
「誰のせい? 海水で体中ベトベトなんだけど」
「……予約しろ」
「大人二人、一部屋……」
「一部屋⁉ 曽場と相部屋かよ」
「二部屋払えるか? 財布と相談しろ」
「相部屋で予約を」
近ちゃんの了承を得たところで宿の予約をした。
彼にスマホを返す前に気が付いた。
「なぁ、連絡先、教えてくれよ。あたし知らないんだよ」
「ん? そうだっけ? 勝手に登録しておいてくれ」
「軽っ? 何で今まで教えてくれなかったんだよ」
「忘れてた」
腹立つ返答には目を瞑り自分のスマホも同時に操作し、念願の連絡先を得た。
これからはいつでも連絡することができ、とても嬉しいし、スマホ越しの近ちゃんの声を聞いてみたい。
「登録完了。寂しくなっても連絡すんなよ。忙しいから」
「今までしたことないんだから、大丈夫だろ……着いたぞ」
そうこうしているうちに、高級宿に到着し、車を出た。
一日中近ちゃんといられて楽しかったが、夜も一緒だ。
「なぁ、近ちゃん」
「なんだよ」
「一緒に風呂入るか?」
「アホ。何言ってんだ?」
「水着、夏まで待てないかと思って。ダイナマイトボディ見るか?」
「夏まで我慢する」
「我慢? エロい下着は?」
「それは見る」
「あはは、近ちゃん、鼻血出すなよ~」
「真っ赤な顔で曽場が言うな」
あたしは近ちゃんが大好きだ。
近ちゃんの隣にいる未来を夢見て、近ちゃんの手を握り歩く。
薫の恋物語 (薫 IF 同じ匂い、見る景色、過ごす時間) 水海リリィ @riri-3zuu3
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