こんにちは。「#佐久間緋色」を更新できていないので、SSを公開してみようと思います。「#佐久間緋色」こと「横顔……」のSSです。
SS 「トイレの待機列の改善策を考えてみた」
今日は俺と佐久間緋色、真人、くるみとタピオカを飲みに来ている。
タピオカ店は商業施設内にあり、タピオカを買う前に佐久間緋色とくるみと真人は化粧室に向かった。
珍しく俺は一人であり、トイレ前で皆の荷物を守っている。
「響君、お待たせしました」
「マジ混雑なう! マサは?」
「真人はまだ帰って来ていない。先に行ってくれと言われているよ」
「そうですか。彼はいてもいなくても分からないんでいいです。では、先に向かいましょう」
俺たちはタピオカ店に向けて歩き出した。
「いや、あの列どうにかならんかね。サック」
「いろいろ言われていますけど、無理でしょうね。諦めましょう」
「そうなの? なんか策はあるんじゃないの?」
近年ではトイレの行列に関して関心が高まっているが、解決の糸口はなかなか見えない。
「そうですね。色々私も思うところはありますよ」
「例えば?」
「まず、トイレの水をジャバジャバ流れるものに戻すことですね。最近のトイレは少ない水で流れるものが多く、ペーパーの使用量によっては流れて行かないことが多い気がします。列ができていてもトイレットペーパーが流れ切っていない場所には誰も入りたがりません。空いているのに流し残しのせいで他の場所を待つケースもあります。節水やらエコやら言われていますし理解できますけど、その弊害です。トイレだけはジャバジャバ流れるものにすればいいんです」
「それな! 開いているのに先頭入って行かないのマジあるある」
流れていないところに入りたくない気持ちは理解できる。
あまり指摘されていない点であり、なかなか新しい視点な気がする。
「解決策でトイレの数を増やすとか簡単に言いますけど、無理ですよね。増えるに越したことはないですけど。これから建設するビルや商業施設はできると思いますが、もう既にある建物や施設にトイレを増やすのにはお金も時間もかかります。壁をぶち壊したり水道管を繋げたり、工事費もとんでもなくかかるでしょう。現実的に難しいと思います。完成したものを維持するのももっとお金がかかります」
「確かに! 勉強できないのにサックマジ頭いい! 増やすのムズイね」
佐久間緋色が述べた通り完成しきった建物の水回りに手を加える工事は時間もお金もかかるだろう。
しかも、増やしたからといってそれを清掃、管理、メンテナンスするのは施設やビルだろうし、増えた分だけ水道代や備品代もバカにならないと思う。
増やせと号令をかけるのは簡単であるが、それを維持し続ける商業施設やビルの意見やキャパというのも無視はできない。
「だからといって多目的のお手洗いや男性用トイレを減らしたりするのは違うと思います。そもそも男性の小便器を、個室と同じトイレとしてカウントにするのはおかしいですよね。男性トイレに列ができないのは利用者の協力による賜物だと思います。男性のみなさんはプライバシーやプライドすべてを捨てて横一列でお手洗いをするわけですよね。しかも、意外と個数は多くはない状況です。そしてトイレをしているときも、すぐ近くに列が形成されていて待っている人のお顔がチラッと見えているわけですよ。そうならば一分一秒でも交代しなければという心理が働いて円滑な選手交代が可能となっているわけですよ。プライバシーとプライドをすべて捨てて効率化を第一に考えているわけです。究極のワンチームです」
「そ、そうだね。プライバシーは捨ててるかな。プライドは……ノーコメントかな」
プライバシーを引き換えに交代が可能になっているのは事実であるし、それが良い悪いというわけではなく効率を突き詰めた最善策なのだ。
混雑しているときは赤の他人なのに協力して円滑な交代を目指そうという気持ち生まれるな。
確かに思っているよりも個数は多いわけではないから、減らすことに対する否定的な意見もあるだろう。
「個室は入ってしまえば並んでいる人の顔も見えないですし、入っている人が何をしているかも分からないです。例えると何が入っているか分からないビックリ箱状態です。小なのか大なのか、それともスマホで何かしているのかそれとも荷物整理しているのか、まさか寝ちゃっているのか、それは全く分かりません。あまりにドアが閉じている時間が長いと列で並んでいる身としては、中にいる人に対して疑心暗鬼になります。とはいえ、男の方も限られた個室を巡って並んでいるのでしょう? 車田君のように」
外からは分からないと思うが、一つか二つしかない大変貴重な個室を奪い合い、負けた者はおとなしく並んでいる光景は日常茶飯事だ。
男性トイレも中では列ができ、攻防が繰り広げられていることは理解して欲しいところだ。
中で何しているのかは本当のところは分からないから、早く交代してもらえることを願うことしかできない。
「サック、マジウケる。男のトイレにチョー詳しい!」
確かに詳しいな。
俺のことを探しに男性トイレに入って来るからかな。
「課題は男性も女性も同じですよ。トイレしかないフロアを設けるでもしなければ解決しないと思います。なので無理ですよ。諦めましょう」
「そ、そっか……」
「マジぴえん」
「今出来ることは、とにかく回転率を良くすること、それに尽きます。もちろん男性とは体の構造も異なりますし、トイレの滞在時間が長くなることもあります」
佐久間緋色の言うように男性と女性では利用時間や利用目的も異なってくる点はあるだろう。
性差は埋められないことであり、その点は尊重しなければならないデリケートな事項であるだろう。
「トイレを使いたい、したいというのは利用者全員が同じですから。お互いが思いやりをもって使わなければなりません。マナーと思いやりです」
「マジ、思いやり大事」
「今のトイレって快適過ぎるんですよ。とても綺麗ですし、いつまでもダラダラいられる空間なんです。もちろんそれを否定はしません。でも、私の祖父母も言っていましたけど、昔はそんな長居したくない場所だったようです。祖父母の時代は和式が多く、匂いなど衛生面も良くなく、暗く、洗面台で自動で石鹼や水が出てこないし、ハンドドライヤーもないような場所だったようです。なので、そんな空間にダラダラ何分も滞在したくなかったようです。一分一秒でも早く出たい場所だったようです」
「それは確かに。一人当たりの利用時間が増えているのかな」
「どうなんでしょうね」
どこのトイレも綺麗で、すぐに出たいとまでは思わなくなっているもんな。
洗面台で歯磨きできる時代になってるから、日本のトイレの衛生がハイレベルということが理解できる。
「あとは……機能面ですかね。オシャレな商業施設なんかはメイクエリアなんか作っているスペースがありますけど、それをなくせばもう一つ二つ増やせるはずです。もちろん嬉しい方もいると思いますけど、設置すべき機能の優先順位はあるはずです。簡単な化粧直しぐらいなら洗面台でできるはずでし、そこの場所をトイレにするだけで、交代効率も二人分は向上します。化粧をするスペースは別のところに設ければいい話です。何も貴重なトイレの領地を使ってまで設ける機能ではないと思います。専用の場所でメイクしたほうがトイレ内でやるよりも衛生的ですし完成度も高くなると思いませんか?」
「サック、グッチのことしか頭にないと思っていたけど色々考えているんだね。本当は頭いいんじゃね? うん。確かに、せめぇ場所でアイライナーやらファンデーションやら全部広げてメイクするよりは、メイクルームを別の場所に設けたほうがよき。限られた水回りに欲しいのはなによりもトイレの個数かも。サック、頭いい!」
二人で盛り上がっているが俺はこの会話に入ることはできない。
分からないし知識のない分野に安易に首を突っ込むことはできないのだ。
でも、トイレの列を少しでも減らすためにはトイレの機能のスリム化というか、そこにしか設置できないものを優先するという点は一理あるのかもしれないな。
「そんなことを私たちが言っても無駄でしょうけどね。諦めたほうがいいです」
「諦めはやっ! サックってグッチのこと以外はすぐ切り替えるよね」
高等部の分際でこんな理想論を並べても社会は変わらないのは理解している。
佐久間緋色は何にも考えていないようでいろいろ考えている人間だ。
「社会の縮小図と言われている学校でも同じじゃないですか。限られた休み時間でやるべきことが山積みのなか、隙間を縫ってトイレに行くわけです。時間がなくて我慢してしまうこともありますよね。学校で解決できていないことが実際の社会で解決できるはずがありません」
「それな! 十分休みで、ひとフロアに三つか四つしかないトイレにひと学年が押し寄せるんじゃ、時間も個数も足らんべ」
彼女達の言うように、学校なんてより悲惨だ。
ひとフロアに数個しかないトイレを五十人学級十クラスの五〇〇人のうち半分が同じ性別だとしたら二五〇人が使うわけだ。
中等部や高等部は大学のように様々な建物が乱立し、至る所にトイレがあるわけでもないから、どこのフロアでも似たような利用状況だろう。
全員が時間内に利用することは不可能だ。
「はい。だから私は授業中にサボってトイレに行くんですよ。空いていますよ。授業なんて聞いても意味ないですし。そういえば響君も授業中にいく派でしたよね」
「そ、そうだね……」
決して授業をサボってトイレに行っているわけではないからね。
しかし、授業中に行かざるを得ない状況にしているのは学校であり社会であり、改善しなければならない点なのかもしれない。
すぐには無理だろうけど。
「ただいま~ ごめん、遅くなった」
「車田君、大丈夫ですか?」
「佐久間さんが僕を心配してくれている」
「車田君が占領するせいで響くんが使えなかったら困りますからね」
「アハハ! ウケる、サック」
「じゃ、タピオカ買おうか。一緒に飲む?」
「はい! 買ってきますね!」
佐久間緋色は嬉しそうにタピオカの列に並んだ。
列に並ぶならトイレよりタピオカがいいよな。
どうでしょうか。
街を歩いているときに思いつきました。
増やすと簡単に言ってもお金も時間もかかりますし、完成した後に維持するのも大変でしょうからね。
学校の話は、学校の男女比なんかでも状況は変わってくると思いますけど、短い休み時間で全員が利用するのは難しいでしょうね。佐久間緋色のように授業中に行くのも理解できます。
年代や性別、生活圏や環境によっても様々意見や考えがあると思いますが、難題でしょう。皆様はどんな解決策が浮かぶでしょうか。
佐久間緋色の考えと合いますか? それも考えが違いますか?
そんなことも含めてお楽しみいただければと思います。