第2話 緊急小口は最優秀貸付だと思う
「今井さん、相談に来たって人がロビーのソファにいるけど」
「あ、ありがとうございます、東係長! 103会議室で貸付相談行ってきます!」
「「「「は〜い/おーい/いってらっしゃい/お願いしまーす」」」」
私──今井祈聖──は資料を持ち、事務室から出てロビーで待つ相談者に声を掛ける。相手は事前に電話で相談をしてくれていたので大体の性別と年齢は分かる。
今回の相談者は40代、母子世帯の母親。パート契約が切れて、次の正規の仕事の給料が出るまでの繋ぎで貸付、特に緊急小口資金を利用したい、とのことだった。
金融機関の借り入れは既に20万借り入れており、利用は無理。
母子父子寡婦福祉資金は利用できるかもしれないけど利用まで時間がかかるし、保証人が必要だから難しいらしい。
……うん、保証人にはなぁ。こっちも保証人が必要な貸付あるけど、やっぱり難しいよなぁ。
まあ、あるあるなタイプの借受人だなぁと思う。
「初めまして、お電話でお話しさせていただいた今井です。お願いします」
「お願いします」
相談者から話を聞いていく。
フルネーム、年齢、住所、世帯員、負債・滞納状況、現在の世帯の収支状況、次の職場の収入並びに給与日、現在残っているお金ね残高、今までに同じような相談をしたことがあるか等々。
まあ、今回は問題なく、貸付できるタイプの相談者だったので一息つく。
「お電話でも説明させてもらったんですけど、この生活福祉資金自体は群馬県社会福祉協議会っていうところが貸付元で行なっている貸付事業なんですね。私達は窓口しかできないので確実に貸付になるかどうかは断言できないんですね」
一旦、話を聞き終えたところで県社協のパンフレットを相談者に見せながら、貸付について説明を行う。
「え、そうなんですか? 確実に貸付になるわけではないんですか?」
「そうなんです。貸付決定に近付けるように県の社会福祉協議会に説明したりはさせていただくんですけど、決定になるかどうかは断言できないんです」
「じゃあ、お金がすぐ入るってことは……」
相談者の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。カードローンや給付金と似たようなイメージだと、確かにお金がすぐに貰えるイメージがあるかもしれない。
でも、これは法律で決まった貸付。しっかり、時間と手間はかかる。なので即日即金というわけではない。
とは言っても、数日で貸付決定になり、決定日にお金が振り込まれるのは早い方なのでは、と思う。
まあ、お金がない人が相談に来ているのですぐに貰いたいという気持ちも分かるけど。
「それについても、特に緊急小口資金は早ければ書類提出後、2〜3日後には貸付決定して振り込まれることもあるんですが、書類に不備があったり、申請が多い時期だと一週間くらいかかることもあるんですね」
「あ〜……」
あ、この反応、繁盛期の忙しさを知ってる人だと察した。顔が若干、同情じみてる。
「結局、一週間後に貸付不可になることもあるのでその点、承知していただいたうえで申請していただく必要があるんですが……」
「なるほど」
意外と貸付不可についてはさらっと受け入れたな〜と思ってしまった。偶に怒る人もいるから、ちょっと安心した。
いや、大半は怒らない人なんだけど。
「あと、これ、お電話でも説明したんですが、貸付なので返済が必要になってくるんですね。返済までには据置期間っていう返済までの準備期間がありまして、その期間を過ぎたら返済してもらうかたちになります」
「据置期間と返済の期限はここに書いてある、2ヶ月以内と12ヶ月以内ですよね」
「そうです。どっちも早く返せそうであれば、期限を早めても大丈夫なんですけど皆さん、一旦、最大限期限使われます」
「私もそうしようかなぁ」
そうしてください、と言いそうになったが、頑張って封じ込む。
期限を短くして返せないより、最大限期限を使ってでも返してもらった方が良い。
「じゃあ、所定様式の申請書類を一式お渡ししますね。必要な書類一覧はパンフレットに書いてあるので、確認をお願いします。書類の書き方についてはこの後、説明しますね」
「ありがとうございます」
「あ、あと、申請のタイミングについてなんですけど、早く申請書類を出していただければ、貸付結果も早めに出るので、可能であれば早めに書類整えてもらえれば……」
「分かりました! 本当、ありがとうございます」
「いえいえ。県の社会福祉協議会の方にも書類を整えていただいている間に下話をするので、今回説明する書類以外にも必要なものがあれば、その際はまた、ご連絡させていただきますね〜」
正直、必要書類も少なめで、年齢とかで引っ掛からなければ連帯保証人もいらなくて、貸付可不可の判断も大体一週間くらいで出て、借りられる上限額10万円で、返済期間が一年間ある、緊急小口資金はどの貸付よりも最優秀貸付だと思う。本当に。
私はそんなことを考えながら、相談者を見送り、事務室へと足を進めた。
次の更新予定
2026年1月18日 17:05 毎日 21:00
社協職員は忙しい!!〜きーちゃんは地元の福祉を支えます〜 沖方 @okikata28
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