第4話 とりあえず王城を出て行くことに
「……ん? なんだ……?」
翌朝。
目が覚めたボクは下半身の違和感に反応して、毛布をめくった。
そしてすぐに再び毛布をかぶせた。
世間様には見せられない状態がそこにあったから。
「ちょっとぉっ!? 何してんだよぉっ!?」
「むぐっ、むぐっ……ナニしておるのじゃ……むぐっ」
「いや、朝から!?」
「むぐっむぐっ……朝から元気だったのは……むぐっむぐぐっ、くちゅっ、ご主人さまの方なのじゃ……むぐっ」
「あ……ちょ……」
はうっ!?
「むぐぅ……ぐぅ、ごくん……」
「あ、あぁ……」
ボクのいろいろな尊厳が失われてる気がする……。
いや。元の世界でラノベを読んでた頃は、羨ましいぞコラぁ!? なんて思ってたけどな!? めちゃくちゃ思ってたけどな!?
「……ふぅ。素晴らしい栄養補給なのじゃ」
「栄養補給……?」
「そうなのじゃ」
満面の笑みを浮かべたサキュバスピクシーが毛布の中から姿を見せた。
そんなに満足なのか……顔がめちゃくちゃツヤツヤしてるぞ?
いや。ボクごときがこの状況を不満に思うなんて贅沢なのかもしれない。
……ていうか、アレが栄養補給なんだ。
それなら仕方ないよね。食事と同じだもの。
そう。これは食事なんだよ、うん。
「……それよりも、ちょっとマズいな……」
「美味しいのじゃ?」
「そっちのマズいじゃなくて……え? 美味しいの!? いや、そうじゃない。そういう話は置いといて……」
「残念なのじゃ」
「残念がらない。ボクが心配してるのは、君を連れてここを出るのは目立つって話」
「目立つのはマズいのじゃ? ご主人さまは『魔物使い』なのじゃ。わらわが側に控えても問題ないのじゃ……ああ。わらわほどの魔族を従えるのは確かに目立つかもしれんのじゃ」
「それとはちょっと違ってて……」
ボクは……ボクの『魔物使い』としての力が実は役立つものだったとしても、ここの人たちのために使う気はない。
昨日の扱いには納得してないからな。
あんな扱いされて協力とかしたくない。
手の平返しとかされたらめちゃくちゃ腹が立つ。
だから金貨50枚もらってそのまま出て行くつもりだし、できればこの国からも逃げ出したい。
初手、逃亡。これが正解だと思う。
そうするには……ボクが無能だと思われてる状態が必要だけど、このロリばばあっ子がいるとそのへんが誤魔化せない。
「……うーん。どうすれば……」
「……わらわが見えなけばいいのじゃな? それなら簡単なのじゃ」
「え……?」
その瞬間、ロリばばあっ子の気配が薄くなって、さらには姿が消えていく。
「……えぇ?」
「わらわはサキュバスピクシーなのじゃ。姿を消すなどお手の物じゃ。じゃから隠密としてこの城に忍び込んだのじゃ」
「隠密って……」
……つまり忍者ポジション!? わらわっ子属性は忍者的な部分だった!?
「……偵察ってこと?」
「召喚魔術を使うという情報はあったのじゃ。わらわとしては……できればついでに勇者を暗殺して手柄を立てるつもりじゃったが……」
「実は昨日の夜にボクが殺されかけてた件」
「ごめんなさいなのじゃ……とにかくわらわはご主人さまの支配下になってしもうたのじゃ。いや、今はそれが幸せだと感じるのじゃが……わらわもついに番うことが叶ったのじゃし」
……えぇ、番うって。それってある意味で究極の洗脳なんじゃ? ちょっと自分の力が怖いかも。
まあ、相手は魔物限定か。
みんながみんなロリばばあっ子みたいな会話できる魔物でもないだろうし。
ぺた、ぺたぺた。
むちゅ、ぺろ。
「こら。姿が見えないからって……ちょ、おい……」
「ご主人さまはいい匂いなのじゃ。わらわは嬉しいのじゃ」
これが『魔物使い』の真の力だというのか!?
将来的にモンスター娘のハーレムモード!?
いやいや!?
でも危険だけど憧れる!?
「とりあえず舐めるのは禁止で」
「……残念なのじゃ……」
ぺたぺた、さわさわ。
「触るのもほどほどに」
「……うぅ。ほどほどにするのじゃ……」
「このまま、姿を隠した状態でこの王城から出て行く予定だ」
「分かったのじゃ」
あ、こいつ……後ろからバックハグで大しゅきホールドかまして……かかとで股間を優しく、だと!?
ごちそうさまです!?
「こら、やめろって。あ、そういえば……」
「なんじゃ、ご主人さま?」
「名前は?」
「わらわの名前じゃな? わらわは……サキュバスピクシーのミカゲじゃ」
「ミカゲか。これからよろしくな、ミカゲ」
「もちろんなのじゃ。いっぱいよろしくするのじゃ、うへへ……」
いや!?
笑い方がエロすぎぃっ!?
「……実にあっさりと出てきたのじゃ……」
「まあ、そのくらい……ボクのことはいらないんだろうな……」
いろいろと心配していたけど……金貨を受け取ったらあっさりと外に出されてしまった。
しかも、簡単な地図を渡されて、案内もなく新たなボクの家に向かってる。
もちろんミカゲは姿を消したままで、しかも、どうやら浮かんでるらしい。
足音がしないはずだ。
コウモリみたいな羽もあったし、そりゃ飛べるか……。
「確かに一般的な『魔物使い』に対する姿勢と考えれば、そういうものかもしれんのじゃ。むしろ、金貨をたくさんもらえたという部分では優遇されとるのじゃ」
「まあ、金貨をもらえたからってクソみたいな扱いを受けたことは忘れないけどな」
とりあえずボクは普通の『魔物使い』とは違って、120年生きた魔族をテイムできるくらいには強い。
まずは……割り当てられた家というか、アパートみたいな部屋貸しのところみたいだけど、そこに行ってから、だ。
☆☆☆☆☆
平沢縁を見送った残留組の会話。
「……なぁ、あいつ、すげぇ勃起してなかったか?」
「ヤバいだろ、こんな状況でズボンがパンパンになるくらいおっ立ててるとか……」
「いや、命の危機に際してはそういうことがあるって聞いたことないか?」
「「ある!」」
「……せめて、金貨50枚でこの町に引きこもってる間に、おれらが平和な世界にしてやろうぜ」
「そうだな」
「やるか」
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