第3話 アクシデント!

 抜剣の儀が終わったら、次は剣の登録試験が控えている。戦闘用自動魔術具と抜いたばかりの剣を交えることで制御コントロール特性アトリビュート脅威ハザードの評価から総合ランクを割り出し、使用者名とともに登録しなくてはならないのだ。

 これも成績順であるため、一番最後だ。先ほどの出来事を思い返し、何度もため息をつきながら順番を待つ。

 なんで俺なんかがあんな特殊な剣を抜いたんだ? 一体どういうことなんだ……。

 考えても答えは出ない。とにかく目立ちたくないのだ。もう何も起こらないでくれよ。


 俺の番が回ってきて、戦闘用自動魔術具の前に立つ。

 鞘を職人に作ってもらうまで、剣を空間の裂け目から召喚しなければならない。


「我がつるぎよ、この手に」


 俺の言葉に応えるように、空間が裂け、先ほど見たばかりの柄が姿を現す。さっきまでの出来事が夢ではなかったことを知って、テンションが下がった。

 

『何してんのよ! 早くやるわよ』

『この敵を倒せばよいのですね。このスティーリアにお任せください』

『面白そうじゃん! ウチにやらせて!』


 剣の魂はわちゃわちゃと喋り出す。


「ああもう、やかましいな」


 さっさと終わらせようと思い、俺は平均レベルの剣術を披露する。だが――。

 魔術具に向かって剣を振り下ろした瞬間、あたりに激しい電撃が走った。魔術具が傷つく。

 この戦闘用自動魔術具は基本的に傷がつくなんてことはない。非常に頑丈なのだ。

 何が起こっているんだ――? 俺、普通に振っただけなんだけど?

 もう一振りすると、今度は刃が炎を吹き、魔術具のカメラ部分をピンポイントで燃やした。


『ロザリア、ラディアの二人の実力を見てからわたくしの力を試そうと思いましたが、意外にやりますね。ですが、まだ足りません』

『何よ、氷なんて大したことできないくせに!』

『ウチ、結構頑張ったけどなぁ』


 俺は嫌な予感がして動きを止めようとしたが、勝手に体が動いて……? いや、違う。勝手に剣が動いて、それについていくように無理やり体が動かされ、次の一太刀が繰り出される。

 やってしまった、とすぐに悟った。

 戦闘用自動魔術具は一瞬にして、氷の塊にされてしまったのだ。


「何をやっている! 魔術具を戦えとは言ったが、壊せとは言っていないぞ!」

「す、すみません。剣が勝手に動いて……」


 試験官が慌てて近づいてきた。俺は言い訳をすることしかできない。すでに登録を終えたやつらが見物に来ていたようだが、呆気に取られている。

 本当に、何が起こっているんだ? 夢なら覚めてくれないか……? というか、弁償しなきゃいけないのか? これ、めちゃくちゃ高そうな魔術具だけど……。終わった――。

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