第2話 抜剣の儀
儀式が始まる。学園長や名だたる魔法師、剣士が壇上に並んで見守る中、成績順に一人ひとり剣を抜いていく。中央の魔法陣に魔力を注ぎ込むと、属性ごとに決まった色の光を放ち、空間が裂けて剣の柄が浮かび上がってくるのだ。赤、青、黄、緑、白、黒とカラフルな光の矢が、会場の天井を突き破る。
儀式は順調に進み、それぞれが特色ある剣を抜いていく。あっという間に俺の番がきた。周囲が冷笑する中、俺は魔法陣の前に立つ。
頼んだぞ、絶対に余計なことはしてくれるなよ――。
俺はありったけの魔力を解き放ち、注ぎ込んだ。魔法陣は淡く光り、無事発動してくれる。ほっと息をついたのも束の間、魔法陣から逆に魔力が跳ね返ってくるような感覚に気圧される。
なんだ? やっぱり俺の魔力では、そもそも抜剣の魔法すら発動しないのか?
だが、特にそれ以外問題なく、剣の柄が現れる。またほっと息をついて、その柄を握った。
すぅっと光の柱が立った。会場がざわめいたのがわかる。不思議に思って光を見上げると……。
「さ、3色!?」
なんと、光は3本立っていて、赤、青、黄に輝いている。
『ちょっと! 何ぼさっとしてんのよ! 早く抜きなさいよね!』
『あなたが我が主。わたくしのお力をお貸しいたしましょう』
『なになに? 楽しそうなことしてるのね! ねえねえ、早く戦いたい!』
さらに驚いたことには、剣から話し声が聞こえてくる。学長と国一番の魔法師が近づいてきて、剣をまじまじと見つめた。
俺は何が起きているのか理解できず、ただ放心している。
「なんと! 一本一魂の原則が打ち破られておる。3つの魂が混在しておるな」
「魔法陣が書き換えられたのでしょうか? それとも、たまたまなのか――いずれにせよ、興味深い事象ですね」
俺はとりあえず剣を最後まで抜くことにした。
周囲のざわめきは止むことを知らない。
――ねえ、俺、頼むから余計なこと起こさないでって願ってたよね? これ、どうにかして誤魔化せ……ないよな、うん。
俺のでっかいため息は、会場の喧騒に溶けて消えていった。
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