学園最下位の俺が抜いたのは、三つの魂を宿す規格外の《ケルベロスの剣》でした。
泉紫織
第1話 学園の落ちこぼれ
「おい、落ちこぼれのレイ・メラン。お前、抜剣の儀で最後に剣を抜くそうだな。メラン家はお前の代で終わりだな」
「学園最下位のお前に、政略結婚でも娘を嫁がせる家はないだろうからな」
「というか、こいつの微々たる魔力でそもそも魔法陣が発動するのか?」
はははは、とさも可笑しそうに笑うこいつらは、ここ王立魔術・剣術学園の中でも良好な成績を修めている優秀な生徒だ。一方、俺はというと……。
魔術の成績は1学年274人中、274位――つまり最下位。そして剣術は145位、平均も平均だ。
なぜこんなにも成績が悪いか。理由はひとつしかない。俺の魔力は、貴族の平均保有量と比べて極端に少ないのだ。基礎的な魔術でもすぐに枯渇してしまうくらい、とにかく少ない。そのせいで、まともに試験を突破できず、単位をもらえないのである。
「抜剣の儀では剣に振り回されないようにしろよ〜」
またどっと笑いが起きる。
この国では、魔力を持って生まれる貴族の子は皆、11歳になると王立魔術・剣術学園かその分校に入学することが定められている。そして12歳になる年、つまり2年生のはじめにその生徒全員がひとり一本、オリジナルの剣を所有するのだ。そのオリジナルの剣を生み出す儀式が「抜剣の儀」。
生み出した剣には、原則一体の魔物の魂が埋め込まれている。すなわち、抜剣の儀とは一生に一度きりの戦いにおけるバディ決めの儀式なのだ。
「どんな剣が出るだろうか」
「俺は炎一択だな。俺の得意属性に合わせてくれないと困る」
「いやいや、やっぱり強いのは雷だろう」
「お前の家は代々雷の剣を抜いているからな。お前もきっとそうだろう」
あちらこちらで、この後の抜剣の儀への期待の声が聞こえてくる。
儀式では成績順に剣を抜いていく。すなわち、俺は一番最後。それだけでも目立つというのに、剣が超絶ザコいとか、剣が暴走して振り回されるとか、そんなことが起こったら……。
俺はひっそりと生きたいんだ。お願いだから、これ以上悪目立ちさせないでくれ。何も起こるなよ――。
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