第6話

俺は部屋のドアを開けた。

若干気が重い。

いなくなっててくれないかなと密かに思いながら部屋に入った。


悪魔はソファーに座り、英字新聞を読んでいた。

――やっぱり、まだいた。


「おう、帰ったか。おかえり」

「まだいるのかよ」

「いるさ。まだ願いを聞いてないからな」

「帰ってくれって言ったじゃん」

「ああ、帰ったさ。そしてまた来た」

――こいつ、屁理屈言いやがって。


俺は帰りにコンビニで買ったビールを二本テーブルに置いた。

「おっ、気が利くではないか」

「まだいるとは思ったからな」

「悪いな。

 ……何だ、発泡酒か」

「いいだろ。金がねーんだよ」

俺と悪魔はビールを開けた。


「ところで、願いは決まったのか?」

「別に、特にないんだよ」

「なんだお前、金もない、願いもない、彼女もいない」

「最後のはまだ言ってねーだろ」

「言わなくても分かる。金曜の夜だぞ」

「うるせーな」

「せっかく一度きりの人生なんだ。目的がないのは楽しくないぞ」

「そう言われてもな〜」

「そして……」

そこで悪魔は床のコンビニ袋をちらりと見た。

「……つまみもない」

――こいつ、面倒くせ〜。


俺はコンビニ袋からサキイカと柿ピーを出してテーブルに置いた。

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