第5話

翌朝、窓から差し込む日の光で目が覚めた。

変な夢見たな。

俺は自分にそう言い聞かせながら、昨晩悪魔が座っていたソファーの方を見た。

――まだ、いる!

夢じゃなかった。


悪魔は俺の方に振り向いた。

「おはよう。よく眠れたかね?」


俺は黙ったままテーブルまで歩いた。

テーブルには朝食が準備されていた。

トーストとハムエッグ、サラダまである。

意外と手が込んでいる。


「悪いが、先に頂いている」

「これ、お前が……?」

「これくらい、吾輩の手に掛かれば容易いものだ」

「凄いじゃないか。本当に何でも叶えられるんだな」

「ああ。冷蔵庫の食材は勝手に使わせてもらった」

……普通に作ったのかよ。


しかし、こんなことをしている場合じゃない。

俺は悪魔の手作り朝食を平らげ、出勤の準備をした。


いつものように家を出て、電車に乗る。

いつものように授業をし、職員室で仲間とバカ話をする。

いつものように電車に揺られ家に帰る。

いつものように一日を過ごした。


そうだ、今日は金曜日だ。

土日は家でゆっくりできる。


あいつさえ居なければ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る